関電は7月1日から季時別電灯PSという料金メニューを開始します。
これはピーク時間(13時~16時),オフピーク時間(ピーク時間を除く7時〜23時),夜間(23時~翌7時)という時間帯別に料金を変えるというものです。
基本的にうちは昼間人がいないので,節約になると思い,申し込みの電話しました。
すると…シミュレーションの結果,うちではお得にはならないので変えない方がいいと言われてしまいました!
しかし2人ぐらしのマンションでお得にならないなら,どのくらいならお得になるんでしょうか?
シミュレーションといってもスマートメーターなんて我が家にはないので,関電には月の総使用量しか情報は無いはず。
ということは基本的には使用量が多いほどお得になるんでしょう。
ということで,シミュレーションしてみました。
結果は,けっこう衝撃的でした…。
まずは,一般家庭で普通契約する従量電灯Aの料金を計算する関数です。
menu1 <- function(x) {
menu.tmp <- function(x){
y <- 320.25
if ( x > 300 ) y <- y + 25.55 * ( x - 300) + 24.21 * 180 + 19.05 * 120
else if ( x > 120 ) y <- y + 24.21 * ( x - 120) + 19.05 * 120
else if ( x > 15 ) y <- y + 19.05 * x
return(y)
}
y <- sapply(x, menu.tmp)
return(y)
}
次に,季時別電灯PSの料金を計算する関数です。
季時別電灯PSはピーク時間・オフピーク時間・夜間の割合が決まらなければ料金を計算できません。
ここでは,ピーク時間と夜間の割合を指定することで「電気料金を計算する関数」を返す関数を作りました。
menuGen <- function(peak, night){
menu <- function(x) {
peak.w <- x * peak
night.w <- x * night
x <- x - peak.w - night.w
menu.tmp <- function(x){
x
y <- 1155
if ( x > 230 ) y <- y + 27.94 * ( x - 230) + 26.41 * 140 + 20.62 * 90
else if ( x > 90 ) y <- y + 26.41 * ( x - 90 ) + 20.62 * 90
else y <- y + 20.62 * x
return(y)
}
y <- sapply(x, menu.tmp)
y <- y + 52.82 * peak.w
y <- y + 8.19 * night.w
y <- y - 336
return(y)
}
return(menu)
}
library(ggplot2)
p <- ggplot(data.frame(x=c(0,500)), aes(x)) +
stat_function(fun=menu1, geom="line", aes(colour="従量電灯A")) +
scale_colour_manual("料金メニュー", values=c("blue","red")) +
opts(title="電気料金メニュー別料金") +
xlab("使用電力量(kWh)") +
ylab("料金(円)")
まずはピーク時間にも夜間にも電気を全く使わない,という設定です。
menu2 <- menuGen(peak=0, night=0) # ピーク時間0%,夜間0%に設定
p + stat_function(fun=menu2, geom="line", aes(colour="季時別電灯PS"))
見て分かるとおり,季時別電灯PSは使えば使うほど損する状態です。
では,徐々に夜間の割合を高めていきましょう。
menu2 <- menuGen(peak=0, night=0.1) # ピーク時間0%,夜間10%に設定
p + stat_function(fun=menu2, geom="line", aes(colour="季時別電灯PS"))
10%ではまだ損をします。
menu2 <- menuGen(peak=0, night=0.2) # ピーク時間0%,夜間20%に設定
p + stat_function(fun=menu2, geom="line", aes(colour="季時別電灯PS"))
20%では400kWh強からやっと季時別電灯PSが逆転し始めます。しかし500kWhまでいってもその差は微々たるものです。
menu2 <- menuGen(peak=0, night=0.3) # ピーク時間0%,夜間30%に設定
p + stat_function(fun=menu2, geom="line", aes(colour="季時別電灯PS"))
30%で,やっと季時別電灯PSに変える意義があるぐらいの差が出ました。
では,次にピーク時間を上げていってみます。夜間の割合は30%で固定します。
menu2 <- menuGen(peak=0.05, night=0.3) # ピーク時間5%,夜間30%に設定
p + stat_function(fun=menu2, geom="line", aes(colour="季時別電灯PS"))
ピーク時間5%で,すでに季時別電灯PSの意義は薄れてきます。300kWhが分水嶺になっていますが,だいぶ使わないと差は出ません。
menu2 <- menuGen(peak=0.1, night=0.3) # ピーク時間10%,夜間30%に設定
p + stat_function(fun=menu2, geom="line", aes(colour="季時別電灯PS"))
ピーク時間10%まで上げると,もはや500kWhまででは季時別電灯PSは損をしてしまいます。
menu2 <- menuGen(peak=0.1, night=0.4) # ピーク時間10%,夜間40%に設定
p + stat_function(fun=menu2, geom="line", aes(colour="季時別電灯PS"))
ピーク時間が10%の場合は,夜間の割合を40%程度まで上げる必要があります。
結果をまとめると,以下のようになります。
この条件をクリアできる世帯はどのくらいあるんでしょうか?
まず,大阪府の1世帯あたり人員はだいたい2〜3人です。
3人世帯だと微妙なところなので得になるのは4人以上の世帯が中心になってきます。
この時点でだいぶ絞られます。
また,やはり厳しいのは,「総使用量の30%以上を夜間に回す」という点でしょう。
たんにピークに節電するだけでは得になりません。
総使用量の30%以上を夜間に回すというのがどのくらい現実的なのかが,ちょっと分かりません。
しかしかなり工夫をする必要があると思います。
そして間違ってはいけないのは,あくまで「夜間に回す」のであって,総使用量はある程度維持する必要があります。
でないと,季時別電灯PSが得になる使用量を下回ってしまう恐れがあります。
つまり,オフピーク時間の使用量を減らすのではなく,夜間の使用量を増やすことが季時別電灯PSの効果を高めます。
ピーク時間の割合が5%というのも,家庭環境によっては簡単ではないでしょう。
関電のページには「エアコンの設定温度を28℃設定でピークカット!」と書いていますが,28℃設定でも5%という閾値を考えると厳しい気がします。
ピーク時間はエアコンもテレビも付けないほうがいいでしょう。
あるいは家を出るのが一番です。
ただしそこでカフェに入ってコーヒーでも飲んでしまえば,節約分は消し飛びます。
シミュレーションの結果,季時別電灯PSに変えて得をする世帯は,かなり限られている,ということが分かりました。
ちなみに去年の我が家の電気使用量は,7月が254kWh,8月が285kWh,9月が196kWhなので,あきらかに損をしそうです。
電話口でシミュレーションしてくれるのはありがたいのですが,料金体系そのものをもうちょっとなんとかできなかったんでしょうか…。
ちなみに季時別電灯PSの解説ページの例は,ピーク時1%,夜間60%です(下のプロット)。
夜間60%って,特別な設備と訓練がないと無理では…。
menu2 <- menuGen(peak=0.01, night=0.6) # ピーク時間1%,夜間60%に設定
p + stat_function(fun=menu2, geom="line", aes(colour="季時別電灯PS"))