導入

近年、平均世帯収入が低下しているという話題が私のタイムライン上で騒がれていたのだが、この一因は、世帯規模の縮小にあると考えられる。そこで、平均世帯収入の縮小率を、一世帯当たりの平均人員数の変化と一人当たりの平均収入の変化に分解してみた。こんな議論、すでに経済学者がもっとちゃんとやっているのではないかと思うが、先行研究を探すより自分で計算したほうが早いし、楽しそうなので、やってみた。

\(t\) 年の平均世帯収入を \(Y_{t世帯}\)\(t\) 年の平均個人収入を \(Y_{t個人}\)\(t\) 年の1世帯当たりの平均世帯員数を \(n_t\) とすると、

\[ Y_{t世帯}=n_t\cdot Y_{t個人} \] である(証明は割愛)。\(t\) 時点と \(t-1\) 時点の平均世帯収入の比をとると、 \[ \frac{Y_ {t世帯}}{Y_{t-1世帯}} = \frac{n_t\cdot Y_{t個人}}{n_{t-1}\cdot Y_{t-1個人}} \\ \qquad = \frac{n_t}{n_{t-1}} \cdot \frac{Y_{t個人}}{Y_{t-1個人}} \] である。つまり、平均個人収入が\(t-1\)から\(t\)のあいだに変化しなくても一世帯当たりの平均世帯員数が減少すれば、それに比例して平均世帯収入も減少するということである。

さて、報道によると1995年の平均世帯収入が550万円、2015年のそれが428万円、さらに国勢調査によると、一世帯当たりの平均世帯員数は1995年が2.82人、2015年が2.33である。それゆえ、これらの値を上の式に代入すると、 \[ \frac{428}{550} = \frac{2.33}{2.82} \cdot \frac{Y_{t個人}}{Y_{t-1個人}} \\ 0.778 = 0.826\cdot \frac{Y_{t個人}}{Y_{t-1個人}} \\ \frac{Y_{t個人}}{Y_{t-1個人}} = 0.778/0.826 = 0.94 \] となる。つまり、一人当たりの収入も確かに減少しているが、一世帯当たりの平均世帯員数の減少率のほうが大きく、そちらのほうが平均世帯収入減少の主因と言ってよさそうである。