背景

  • 糖尿病で診断された患者では約36%が非肥満者である.

  • 糖尿病発症には家族歴が強く関与しているが,先行研究からは肥満者に比べ,非肥満者のほう,家族歴の影響がより強いと報告された.

  • また,父親の糖尿病歴に比べ,母親のほうが,本人の糖尿病発症とより強く関連しているとも報告された.

  • Prediabetes, いわゆる前糖尿病状態,あるいは血糖のコントロール不良の時には,体重の増加・減少がよくみられる.

  • 先行研究では,ベースライン時のBody Mass Index (BMI)のみを考慮しているが,その前後の体重の増減も考慮する必要がある.

目的

  1. 愛知職域コホート研究で,参加者の父母の糖尿病歴と追跡中本人の糖尿病の発症リスクとの関連性を,まずベースライン時の肥満の有無によって異なるかを調べる.

  2. 次に,対象者のうち,非肥満状態が続くサブグループで,父母の糖尿病歴追跡中糖尿病発症リスクとの関連性を調べる

方法 「対象者」

ベースライン(2002年)調査 愛知県職員(35~66歳) n = 5,471

  • 除外基準:
  • 糖尿病の病歴がある者 (n = 430);
  • ベースライン時空腹血糖値 \(\geqslant\) 126 mg/dl,
    または糖尿病の治療を受けている (n = 221);
  • 必要なデータが欠損 (n = 374):
    年齢,性別,身長,体重,総エネルギー摂取,
    血圧,トリグリセリド,HDLコレステロール,
    飲酒・運動・喫煙習慣,出生体重.

n = 4,446 (男 3,492; 女 954)

方法 「糖尿病発症の把握」

  • 追跡期間: 2002年3月~2011年3月までの合計9年間

  • 糖尿病発症の確認方法

    • 自己申告により治療の開始 (妥当性96%);

    • 経年的な健診結果で,空腹時血糖値が初めて126mg/dLを超えた

方法 「統計解析1」

性別・年齢で調整した糖尿病発症率の推定

説明変数:両親の糖尿病歴の有無で分類

「両親とも病歴なし」
(No parental history)
(基準群)
「父のみ病歴あり」 
(Father only)
「母のみ病歴あり」  
(Mother only)
「両親とも病歴あり」
(Both)

全対象者を肥満の有無により層別化 (BMI 25 kg/m2 以上・未満)

  • Cox比例ハザードモデル
    • Model 1: 親の病歴,年齢,性別,喫煙,飲酒,運動,総エネルギー摂取,
      出生体重
    • Model 2: Model 1 \(+\) BMI
    • Model 3: Model 2 \(+\) メタボリックシンドローム項目の数 (0-5)
    • 交互作用検定モデル: Model 3 + 肥満 \(\times\) 親の病歴の有無

方法 「統計解析2」

サブグループ解析

  • 2002年~2011年の9年間追跡中,BMIが25を超えたことがない対象者 (n = 3,057)

  • 20歳,25歳,30歳,35歳,40歳,及びベースラインより5年前のBMIがいずれも25を超えたことがない対象者 (n = 2,573)

Means (SD) and proportions of baseline characteristics according to parental diabete history categories (1).
No parental history
(n = 3,832)
Father only
(n = 373)
Mother only
(n = 216)
Both
(n =25)
P
value

Age (years)

47.7 (7.1)

45.9 (6.8)

48.4 (6.8)

46.1 (6.5)

< 0.001

Men (%)

79.5

71.3

73.6

80.0

< 0.001

Low Birth weight (%)

3.5

7.0

6.5

0

0.001

BMI (kg/m2)

22.9(2.8)

23.5 (2.9)

23.5 (2.8)

23.4 (2.8)

< 0.001

Current smoking (%)

28.6

28.7

22.7

36.0

0.09

Means (SD) and proportions of baseline characteristics according to parental diabete history categories (2).
No parental history
(n = 3,832)
Father only
(n = 373)
Mother only
(n = 216)
Both
(n =25)
P
value

Physical activity (%)

55.6

52.0

58.8

56.0

0.41

Daily alcohol consumer (%)

30.8

24.3

28.2

32.0

0.41

Fasting glucose (mg/Dl)

92.3 (91.9 ~ 92.6)

92.9 (92.4 ~ 93.9)

93.4 (92.1 ~ 94.8)

95.9 (91.6 ~ 100.5)

0.09

Total energy intake (kcal/d)

1,742 (548)

1,808 (605)

1,779 (508)

1,656 (409)

0.34

Total cholesterol (mg/dL)

208.9 (34.6)

208.5 (35.1)

213.2 (36.6)

211.7 (32.3)

0.19

考察 (1)

  • 親の糖尿病歴が本人の糖尿病発症リスクと有意な正の関連が認められ,特に母親に糖尿病がある人では,非肥満でも糖尿病発症のリスクが有意に高かった.

  • 肥満者では父親の父親の糖尿病歴が本人の糖尿病発症リスクの上昇と関連した

  • 肥満の有無によって,母親の糖尿病歴が本人の糖尿病発症リスクに対する影響には,有意な交互作用が認められた.

考察 (2)

  • 母親の糖尿病歴・本人の糖尿病発症リスクの上昇について

    • Personal Fat threshold (PFT)仮説

    • 愛知職域コホート研究の参加者のデータを見ると,若い頃からずっと非肥満だが,発症前までに体重は増加している.

    • ミトコンドリア機能低下仮説

  • 肥満者のみで,父親の糖尿病歴が本人の糖尿病発症リスクとの関連が認められたが,詳細なメカニズムはまだ解明されていない.

結論:肥満の有無によって,父母の糖尿病歴が本人の糖尿病発症に対する影響が有意に異なり,特に肥満のない者では,母親の糖尿病歴が本人の糖尿病発症リスクの上昇と関連する.