回答者は 24名である。標本が小さいため、以下は仮説について確定的な結論を出すものではなく、今後の調査に向けた探索的分析として位置づける。
統計的な有意性を表すp値だけでなく、関係の方向と大きさを表す相関係数rhoも重視する。
本データには、重要な限界が2点ある。
| 出身国 | Freq |
|---|---|
| CN | 3 |
| JP | 21 |
本分析では、アンケートの複数の質問への回答をまとめ、以下の指標を作成した。各指標は、特定の学習経験や教育環境の程度を表している。
| 指標 | 内容 | 作り方 |
|---|---|---|
| 受験プレッシャー | 高校または塾で、受験競争のプレッシャーをどの程度感じていたか | 単独の質問項目 |
| 受験下での学習経験 | 受験を意識する中で、知識の習得・活用、計画性、粘り強さ、協働などの経験がどの程度あったか | exam関連7項目の平均 |
| 探究・協働的な授業 | 問いの設定、話し合い、実社会との接続、振り返りなどの授業経験がどの程度あったか | class関連9項目の平均 |
| 知識以外を含む評価 | 応用力、論理的説明、協働、探究、成長などが成績評価にどの程度反映されていたか | comp関連5項目の平均 |
| 学校外との学習機会 | 地域、企業、大学、行政、NPOなどと関わる学習機会がどの程度あったか | external関連5項目の平均 |
| 3領域の相対的な強み | 知識・スキル・態度/価値観のうち、本人がどの領域を相対的な強み・弱みとして認識していたか | 強みの選択数−弱みの選択数 |
| 3領域間の偏り | 知識・スキル・態度/価値観の得点差がどの程度大きいか | 3領域の最大得点−最小得点 |
ここでは、複数の質問をまとめて1つの指標として扱ってよいかを確認する。Cronbach’s alphaは、質問項目が同じ傾向を一貫して測っているかを表す指標である。
数値が高いほど質問項目のまとまりが強く、一般的には0.7以上が1つの目安とされる。
| 尺度 | alpha |
|---|---|
| 受験を意識した経験(7項目) | 0.860 |
| 探究・協働的な授業(9項目) | 0.934 |
| 評価への反映(全8項目) | 0.481 |
| 知識以外を含む評価(5項目) | 0.674 |
受験を意識した経験のalphaは0.86、探究・協働的な授業のalphaは0.934であった。これらの数値を踏まえ、各質問への回答を平均し、1つの指標として分析する。
| 指標 | N | 平均 | SD | 最小 | 最大 |
|---|---|---|---|---|---|
| exam_pressure | 24 | 3.29 | 1.52 | 1 | 5.0 |
| exam_index | 24 | 2.95 | 0.77 | 1 | 4.0 |
| class_index | 24 | 2.90 | 0.81 | 1 | 4.0 |
| comp_eval_index | 24 | 2.57 | 0.64 | 1 | 3.8 |
| external_index | 24 | 1.71 | 0.75 | 1 | 3.4 |
標本が小さく、回答尺度も連続量とは限らないため、Spearmanの順位相関係数を用いる。
| exam_pressure | exam_index | class_index | comp_eval_index | external_index | |
|---|---|---|---|---|---|
| exam_pressure | 1.00 | 0.107 | 0.067 | 0.856 | 0.408 |
| exam_index | 0.34 | 1.000 | 0.366 | 0.004 | 0.505 |
| class_index | -0.38 | 0.190 | 1.000 | 0.027 | 0.015 |
| comp_eval_index | -0.04 | 0.570 | 0.450 | 1.000 | 0.031 |
| external_index | -0.18 | 0.140 | 0.490 | 0.440 | 1.000 |
探究・協働的な授業、知識以外を含む評価、学校外との学習機会が相互にどの程度関連しているかを確認する。ここで確認される相関は、学校における学習方法、評価方法、外部との連携が、どの程度まとまって存在していたかを示す。
| 関係 | N | rho | p |
|---|---|---|---|
| pressure × class_index | 24 | -0.38 | 0.067 |
| pressure × comp_eval_index | 24 | -0.04 | 0.856 |
| pressure × exam_index | 24 | 0.34 | 0.107 |
受験プレッシャーと探究・協働的な授業の相関係数は、rho=-0.38であった。
この結果から、受験プレッシャーが高いことだけで、探究・協働的な授業経験や知識以外を含む評価のあり方が一律に決まるのかを検討する。
| 指標 | 人数 |
|---|---|
| 高受験プレッシャー層 | 14 |
| うちclass_indexが3.0以上 | 6 |
高プレッシャー層(受験プレッシャー4以上)は14名であり、そのうち探究・協働的な授業の指標が3.0以上の回答者は 6名 であった。
このことから、少なくとも本サンプルでは、強い受験プレッシャーと豊かな探究経験が両立していた事例が存在することが分かる。
| profile_type | Freq |
|---|---|
| 両方弱い型 | 2 |
| 両方強い型 | 3 |
| 中間・混合型 | 6 |
| 受験中心型 | 1 |
| 対象外 | 2 |
高校所在国は全員日本であり、中国出身者の人数も限られている。そのため、以下の結果は参考値にとどめ、日中の高校教育の違いとして解釈しない。
| 指標 | JP_N | CN_N | JP平均 | CN平均 | p |
|---|---|---|---|---|---|
| class_index | 21 | 3 | 3.02 | 2.07 | 0.073 |
| comp_eval_index | 21 | 3 | 2.55 | 2.67 | 0.792 |
| external_index | 21 | 3 | 1.79 | 1.13 | 0.119 |
日中の高校教育を比較するためには、中国の高校を卒業した回答者を別途リクルートする必要がある。
| 回答 | 人数 | external_index平均 |
|---|---|---|
| 不公平だと思う | 15 | 1.85 |
| 公平だと思う | 9 | 1.47 |
「公平に享受できていたと思わない」と回答した者は、15名(62%)であった。
学校外との学習機会の平均は、不公平だと感じていた回答者で1.85、公平だと感じていた回答者で1.47であり、Wilcoxon検定のp値は0.247であった。
自由記述については、留学・渡航プログラムの費用や、選抜による参加機会の制限などとあわせて解釈する必要がある。
以下はggplot2による可視化である。ggplot2がインストールされていない場合、図は表示されないが、それ以外の分析は実行される。
プロファイル・マップ:受験下の経験と探究・協働的な授業
受験プレッシャーと探究・協働的な授業
成績評価に反映されていた要素
主要指標間のSpearman順位相関
学習機会の公平性に関する認識
本調査では、高校卒業時点の自分について、9項目の中から「最も当てはまるもの」と「最も当てはまらないもの」を、それぞれ3つ選んでもらった。
9項目を「知識」「スキル」「態度・価値観」の3領域に分類し、強みとして選んだ項目を+1、弱みとして選んだ項目を−1として、領域ごとの得点を算出した。
この得点は、能力の絶対的な高さではなく、本人の自己認識の中で、どの領域が相対的な強み・弱みだったかを表している。
| 回答状況 | 人数 |
|---|---|
| 指定どおり回答 | 21 |
| 指定数と異なる回答 | 3 |
全回答者24名のうち、強みと弱みをそれぞれ3つ選んだ回答者は 21名 であった。
指定された選択数と異なる回答者(ID:1、5、8)については、3領域の分析から除外した。
| 領域 | N | 平均 | 中央値 | SD | 最小 | 最大 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 知識 | 21 | -0.38 | 0 | 1.16 | -2 | 1 |
| スキル | 21 | -0.24 | 0 | 1.09 | -2 | 2 |
| 態度・価値観 | 21 | 0.62 | 1 | 1.24 | -2 | 2 |
Y得点は、各領域において「強みとして選んだ項目数」から「弱みとして選んだ項目数」を引いたものであり、−3から+3の範囲をとる。
有効回答では、3領域のY得点の合計は必ず0になる。そのため、この分析では「3領域すべての能力が高いか」ではなく、3領域間で強みと弱みがどのように分布しているかを見る。
3領域のうち、最も高いY得点と最も低いY得点の差を
Y_balance_gap とした。
値が小さいほど3領域間の相対的な偏りが小さく、値が大きいほど、特定の領域への強み・弱みの偏りが大きいことを示す。
| 指標 | N | 平均 | 中央値 | SD | 最小 | 最大 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 3領域間の偏り | 21 | 2.62 | 3 | 1.2 | 0 | 4 |
| Y_balance_gap | 人数 | 割合 |
|---|---|---|
| 0 | 2 | 9.5 |
| 2 | 8 | 38.1 |
| 3 | 5 | 23.8 |
| 4 | 6 | 28.6 |
Y_balance_gap = 0
は、3領域の相対的な偏りがないことを示す。ただし、これは3領域すべての能力が高いことを意味するものではない。
| 指標 | N | rho | p |
|---|---|---|---|
| 知識の相対的な強み | 21 | -0.20 | 0.383 |
| スキルの相対的な強み | 21 | -0.22 | 0.331 |
| 態度・価値観の相対的な強み | 21 | 0.35 | 0.120 |
| 3領域間の偏り | 21 | -0.05 | 0.835 |
Y_balance_gapとの相関は、次のように解釈する。
標本が小さいため、p値だけでなく、rhoの方向と大きさを中心に解釈する。
| 状態 | 人数 | 割合 |
|---|---|---|
| 高受験プレッシャー層 | 12 | 100.0 |
| 3領域の偏りなし(gap = 0) | 2 | 16.7 |
| 3領域の偏りが比較的小さい(gap 2以下) | 5 | 41.7 |
| 3領域の偏りが大きい(gap 4以上) | 4 | 33.3 |
高受験プレッシャー層は12名であり、そのうち 5名 は、3領域間の得点差が2以下であった。
ここで用いた「gap 2以下」は、比較のために設定した探索的な基準であり、理論的に確立された基準ではない。人数だけでなく、得点の分布や相関係数とあわせて解釈する必要がある。
3領域の相対的な強み。0は3領域内で中立的な位置を示す。
受験プレッシャーと3領域間の偏り。縦軸が高いほど特定領域への偏りが大きい。
本レポートは全回答者N=24の探索的分析である。3領域の相対的な強み・バランスの分析については、指定どおり回答したN=21のみを使用した。回答者は全員が日本の高校を卒業しているため、結果は日本の高校卒サンプル内の知見として解釈する必要がある。