1 この資料の狙い

この資料では, 近年の公開問題に見られる出題の流れを踏まえ, 次回に形を変えて出されやすいと考えられる次の3テーマを重点的に扱う。

  1. 回転座標系・コリオリ力
  2. 減衰振動・強制振動・共振
  3. 中心力・有効ポテンシャル・軌道安定性

ラグランジアンとオイラー・ラグランジュ方程式は近年すでに正面から出題されており, 次回も同じ形式で続けて出る可能性は相対的に低いと仮定して, 本資料からは外した。

最近の問題では, 公式の暗記だけでなく, 次の一連の処理が問われている。

  1. 現象を表しやすい座標と変数を選ぶ。
  2. 実在する力, 見かけの力, 保存量を整理する。
  3. 運動方程式またはエネルギー式を立てる。
  4. 小さい量について近似・線形化する。
  5. 得られた式から平衡点, 安定性, 振動数を読み取る。
  6. 符号, 次元, 極限を使って結果を検算する。

以下では, 各公式の意味と導出だけでなく, 試験答案をどの順序で組み立てるかも説明する。

2 出題傾向から見た重点テーマ

優先度 対策テーマ 次に出しやすい理由 典型的な問われ方
A 回転座標系・コリオリ力 非慣性系, 回転運動, 地球上の運動をまとめて問える 偏向方向, 落下点のずれ, 回転系の運動方程式
A 減衰・強制振動と共振 自由振動や減衰は頻出だが, 周期外力を含む問題は展開しやすい 定常振幅, 位相差, 共振条件, エネルギー散逸
A 有効ポテンシャルと軌道安定性 重力, 円軌道, 摂動, 微小振動を統一的に扱える 円軌道条件, 安定性, 動径方向の固有振動

3 1. 回転座標系と見かけの力

3.1 1.1 なぜ見かけの力が必要か

ニュートンの運動方程式

\[ m\boldsymbol{a}=\boldsymbol{F} \]

は慣性系で成り立つ。地球表面の座標系のように回転している座標系では, 座標軸そのものが時間とともに向きを変えるため, 回転系で測った加速度をそのまま左辺へ入れることはできない。

任意のベクトル \(\boldsymbol{A}\) に対して, 慣性系と角速度 \(\boldsymbol{\Omega}\) で回転する座標系の時間微分には

\[ \left(\frac{d\boldsymbol{A}}{dt}\right)_{\mathrm{in}} = \left(\frac{d\boldsymbol{A}}{dt}\right)_{\mathrm{rot}} + \boldsymbol{\Omega}\times\boldsymbol{A} \]

という関係がある。

位置ベクトル \(\boldsymbol{r}\) にこの式を1回適用すると速度の関係, さらに1回適用すると加速度の関係が得られる。

\[ \boldsymbol{a} = \boldsymbol{a}' +2\boldsymbol{\Omega}\times\boldsymbol{v}' +\boldsymbol{\Omega}\times (\boldsymbol{\Omega}\times\boldsymbol{r}) +\dot{\boldsymbol{\Omega}}\times\boldsymbol{r}. \]

ここで, ダッシュは回転座標系で測った量を表す。

この式を慣性系の運動方程式へ代入すると,

\[ m\boldsymbol{a}' = \boldsymbol{F} -2m\boldsymbol{\Omega}\times\boldsymbol{v}' -m\boldsymbol{\Omega}\times (\boldsymbol{\Omega}\times\boldsymbol{r}) -m\dot{\boldsymbol{\Omega}}\times\boldsymbol{r}. \]

右辺の第2項以降を, 回転系で現れる見かけの力という。

  • コリオリ力 \[ -2m\boldsymbol{\Omega}\times\boldsymbol{v}' \] 回転系に対して動く物体にだけ働く。速度に垂直なので, 物体の速さを直接変えず, 主として進行方向を曲げる。

  • 遠心力 \[ -m\boldsymbol{\Omega}\times (\boldsymbol{\Omega}\times\boldsymbol{r}) \] 回転軸から外向きに働く。回転系に静止している物体にも働く。

  • オイラー力 \[ -m\dot{\boldsymbol{\Omega}}\times\boldsymbol{r} \] 回転角速度が時間変化するときに現れる。地球自転を一定とみなす問題では消える。

3.2 1.2 地球上の局所座標

局所座標を

  • \(x\):東向き
  • \(y\):北向き
  • \(z\):鉛直上向き

とする。

緯度を \(\lambda\) とすると, 地球自転角速度ベクトルは

\[ \boldsymbol{\Omega} = (0,\Omega\cos\lambda,\Omega\sin\lambda) \]

と書ける。

この成分表示は重要である。

  • \(\Omega\cos\lambda\):水平北向き成分
  • \(\Omega\sin\lambda\):鉛直上向き成分

赤道では自転軸は局所水平面内にあり, 極では局所鉛直方向と一致する。

3.3 1.3 コリオリ力の方向

コリオリ加速度は

\[ \boldsymbol{a}_{\mathrm{cor}} = -2\boldsymbol{\Omega}\times\boldsymbol{v}'. \]

ベクトル積の順序を逆にすると符号が変わるので,

\[ \boldsymbol{\Omega}\times\boldsymbol{v}' \]

を先に右手で求め, 最後に負号を付ける方が安全である。

たとえば物体が北向きに

\[ \boldsymbol{v}'=(0,V,0) \]

で運動するなら,

\[ -2\boldsymbol{\Omega}\times\boldsymbol{v}' = (2\Omega V\sin\lambda,0,0). \]

北半球では \(x\) 成分が正なので, 東向きへ偏向する。

3.4 1.4 小さい偏向を求める一次近似

地球自転による偏向は, 重力による主運動に比べて小さい。この場合は次の順序で解く。

  1. まず \(\Omega=0\) として主運動を求める。
  2. その0次近似の速度をコリオリ加速度へ代入する。
  3. コリオリ加速度を積分して, 一次の速度と変位を求める。

コリオリ力によって生じた速度を再びコリオリ項へ入れると \(\Omega^2\) の効果になる。したがって, \(\Omega\) の一次までなら無視できる。

これは摂動計算の基本形である。

3.5 1.5 回転座標系から見た軌跡

慣性系で直線運動する粒子も, 回転座標系からは曲線運動に見える。

omega <- 0.35
v <- 1
t <- seq(0, 12, length.out = 500)

# 慣性系では x = vt, y = 0
xI <- v * t
yI <- rep(0, length(t))

# 回転座標への変換
xR <-  cos(omega*t) * xI + sin(omega*t) * yI
yR <- -sin(omega*t) * xI + cos(omega*t) * yI

plot(xR, yR, type = "l", asp = 1,
     xlab = "回転系の x'", ylab = "回転系の y'",
     main = "慣性系で直線運動する粒子の見かけの軌跡")
points(xR[1], yR[1], pch = 16)

この曲がりは, 慣性系で横向きの実在力が働いていることを意味しない。回転する観測者から見た結果である。

3.6 1.6 確認問題

緯度 \(\lambda\) の地点で, 地表から高さ \(h\) の位置にある物体を静かに落とす。空気抵抗を無視し, 地球自転角速度 \(\Omega\) の一次まで考える。

  1. 落下中の東向きコリオリ加速度を求めよ。
  2. 着地時の東向き変位を求めよ。
  3. 赤道と極での結果を説明せよ。

3.7 1.7 確認問題の詳しい解説

3.7.1 手順1:0次近似の鉛直運動

物体は静かに落とされるので,

\[ v_z'(0)=0. \]

\(z\) 軸を上向きとすると, 自転を無視した鉛直運動は

\[ \ddot{z}=-g \]

である。したがって,

\[ v_z'(t)=-gt. \]

\(\Omega\) の一次まで求める場合, この未摂動速度をコリオリ項へ代入すればよい。

3.7.2 手順2:コリオリ加速度の東西成分

速度ベクトルは

\[ \boldsymbol{v}' = (0,0,-gt) \]

である。地球自転ベクトル

\[ \boldsymbol{\Omega} = (0,\Omega\cos\lambda,\Omega\sin\lambda) \]

とのベクトル積は,

\[ \boldsymbol{\Omega}\times\boldsymbol{v}' = \begin{pmatrix} -\Omega gt\cos\lambda\\ 0\\ 0 \end{pmatrix}. \]

したがって,

\[ \boldsymbol{a}_{\mathrm{cor}} = -2\boldsymbol{\Omega}\times\boldsymbol{v}' = \begin{pmatrix} 2\Omega gt\cos\lambda\\ 0\\ 0 \end{pmatrix}. \]

よって東向き加速度は

\[ \boxed{ a_x(t)=2\Omega gt\cos\lambda } \]

である。

落下速度が時間とともに大きくなるため, コリオリ加速度も時間に比例して大きくなる。

3.7.3 手順3:速度と変位を積分する

初めの東向き速度は0なので,

\[ v_x(t) = \int_0^t 2\Omega gs\cos\lambda\,ds = \Omega gt^2\cos\lambda. \]

さらに, 初めの東向き変位も0なので,

\[ x(t) = \int_0^t \Omega gs^2\cos\lambda\,ds = \frac{1}{3}\Omega gt^3\cos\lambda. \]

3.7.4 手順4:落下時間を代入する

落下距離 \(h\)

\[ h=\frac{1}{2}gT^2 \]

なので,

\[ T=\sqrt{\frac{2h}{g}}. \]

したがって着地時の東向き変位は,

\[ x(T) = \frac{1}{3}\Omega g \left(\frac{2h}{g}\right)^{3/2} \cos\lambda. \]

整理すると,

\[ \boxed{ x(T) = \frac{2\sqrt{2}}{3} \frac{\Omega h^{3/2}}{\sqrt{g}} \cos\lambda } \]

となる。

3.7.5 結果の物理的解釈

  • \(\cos\lambda>0\) なので, 北半球でも南半球でも落下点は東へずれる。
  • 赤道では \(\cos\lambda=1\) なので偏向が最大である。
  • 極では \(\cos\lambda=0\) なので, この東向き偏向は生じない。
  • 高さに対して \(h^{3/2}\) で増える。高い場所ほど落下時間が長くなり, コリオリ効果が蓄積するためである。

3.7.6 次元の確認

\[ \frac{\Omega h^{3/2}}{\sqrt{g}} \]

の次元は,

\[ \frac{T^{-1}L^{3/2}}{(L/T^2)^{1/2}} = L \]

なので, 変位として正しい。

3.7.7 答案での要点

  • 先に未摂動の鉛直速度 \(v_z'=-gt\) を求める。
  • \(\boldsymbol{\Omega}\) の成分を明記する。
  • 加速度を1回積分して速度, さらに1回積分して変位を求める。
  • 最後に赤道・極の極限で結果を確認する。

4 2. 減衰振動・強制振動・共振

4.1 2.1 基本方程式

質量 \(m\), ばね定数 \(k\), 速度に比例する抵抗係数 \(c\), 周期外力 \(F_0\cos\omega t\) を考える。

\[ m\ddot{x}+c\dot{x}+kx=F_0\cos\omega t. \]

各項の意味は次の通りである。

  • \(m\ddot{x}\):慣性
  • \(c\dot{x}\):速度に比例する散逸
  • \(kx\):平衡位置へ戻す復元力
  • \(F_0\cos\omega t\):外部から与えられる周期的駆動

一般解は,

\[ x(t) = \text{過渡解} + \text{定常解} \]

の形になる。減衰があると過渡解は時間とともに消え, 十分時間が経過すると定常解だけが残る。

4.2 2.2 自由減衰振動

外力を0とすると,

\[ m\ddot{x}+c\dot{x}+kx=0. \]

特性方程式は,

\[ mr^2+cr+k=0. \]

自然角振動数と減衰率を

\[ \omega_0=\sqrt{\frac{k}{m}}, \qquad \gamma=\frac{c}{2m} \]

とおくと,

\[ r=-\gamma\pm\sqrt{\gamma^2-\omega_0^2}. \]

4.2.1 不足減衰 \(\gamma<\omega_0\)

\[ x(t) = Ae^{-\gamma t} \cos(\omega_d t+\phi), \qquad \omega_d = \sqrt{\omega_0^2-\gamma^2}. \]

振動しながら指数関数的に減衰する。

4.2.2 臨界減衰 \(\gamma=\omega_0\)

振動せずに平衡位置へ戻る。振動しない条件の中では最も速く戻る。

4.2.3 過減衰 \(\gamma>\omega_0\)

振動せず, 2つの指数関数の和としてゆっくり平衡位置へ近づく。

4.3 2.3 強制振動の定常解

定常解を複素表示で

\[ x(t) = \Re\left[Xe^{i\omega t}\right] \]

とする。外力も \(F_0e^{i\omega t}\) の実部として扱うと,

\[ (-m\omega^2+ic\omega+k)X=F_0. \]

したがって,

\[ X = \frac{F_0} {k-m\omega^2+ic\omega}. \]

振幅は複素振幅の絶対値なので,

\[ A(\omega) = \frac{F_0} {\sqrt{(k-m\omega^2)^2+c^2\omega^2}}. \]

また,

\[ x(t)=A\cos(\omega t-\delta) \]

と書けば,

\[ \tan\delta = \frac{c\omega} {k-m\omega^2}. \]

  • 低周波では \(\delta\simeq0\):変位は外力とほぼ同位相
  • 共振付近では \(\delta\simeq\pi/2\)
  • 高周波では \(\delta\simeq\pi\):変位は外力とほぼ逆位相

4.4 2.4 共振

振幅が最大となる角振動数を共振角振動数という。

\[ A^2 = \frac{F_0^2} {(k-m\omega^2)^2+c^2\omega^2} \]

なので, 分母を最小にすればよい。

\(\omega_0=\sqrt{k/m}\), \(\gamma=c/(2m)\) を用いると,

\[ A = \frac{F_0/m} {\sqrt{(\omega_0^2-\omega^2)^2 +4\gamma^2\omega^2}}. \]

非零の周波数で振幅が最大になる条件は,

\[ \boxed{ \omega_{\mathrm{res}} = \sqrt{\omega_0^2-2\gamma^2} } \]

である。

この値が実数となるには,

\[ \gamma<\frac{\omega_0}{\sqrt{2}} \]

が必要である。減衰がこれより大きいと, 有限周波数に明瞭な振幅ピークは現れない。

m <- 1
k <- 1
F0 <- 1
omega <- seq(0, 2.2, length.out = 600)
cs <- c(0.08, 0.25, 0.6)

A <- sapply(cs, function(cc) {
  F0 / sqrt((k - m*omega^2)^2 + (cc*omega)^2)
})

matplot(omega, A, type = "l", lty = 1,
        xlab = expression(omega), ylab = "定常振幅",
        main = "減衰係数による共振曲線の違い")
legend("topright", legend = paste("c =", cs),
       lty = 1, col = seq_along(cs), bty = "n")

4.5 2.5 エネルギー散逸と外力の仕事

力学的エネルギー

\[ E = \frac{1}{2}m\dot{x}^2 + \frac{1}{2}kx^2 \]

を時間微分すると,

\[ \frac{dE}{dt} = -c\dot{x}^2 + F_0\dot{x}\cos\omega t. \]

  • \(-c\dot{x}^2\):抵抗によって失われるパワー
  • \(F_0\dot{x}\cos\omega t\):外力が系へ与えるパワー

定常状態では1周期平均のエネルギーは変化しないので,

\[ \left\langle F_0\dot{x}\cos\omega t \right\rangle = \left\langle c\dot{x}^2 \right\rangle. \]

定常解 \(x=A\cos(\omega t-\delta)\) に対して,

\[ \left\langle c\dot{x}^2 \right\rangle = \frac{1}{2}c\omega^2A^2. \]

4.6 2.6 \(Q\)

弱減衰では,

\[ Q \simeq \frac{\omega_0}{2\gamma} = \frac{m\omega_0}{c}. \]

\(Q\) が大きいほど,

  • 減衰が弱い
  • 自由振動が長く続く
  • 共振ピークが高く鋭い
  • 1周期当たりのエネルギー損失が小さい

という性質を持つ。

4.7 2.7 確認問題

強制振動方程式

\[ \ddot{x} +2\gamma\dot{x} +\omega_0^2x = f_0\cos\omega t \]

について,

  1. 定常解の振幅 \(A(\omega)\) と位相遅れ \(\delta\) を求めよ。
  2. 振幅が最大になる角振動数を求めよ。
  3. 有限周波数に共振ピークが存在する条件を求めよ。
  4. 1周期平均の散逸率を求めよ。

4.8 2.8 確認問題の詳しい解説

4.8.1 手順1:複素定常解を仮定する

外力を

\[ f_0e^{i\omega t} \]

と考え, 複素解を

\[ x_c(t)=Xe^{i\omega t} \]

とおく。

\[ \dot{x}_c=i\omega Xe^{i\omega t}, \qquad \ddot{x}_c=-\omega^2Xe^{i\omega t} \]

なので, 運動方程式へ代入すると,

\[ (-\omega^2+2i\gamma\omega+\omega_0^2) Xe^{i\omega t} = f_0e^{i\omega t}. \]

したがって,

\[ X = \frac{f_0} {\omega_0^2-\omega^2+2i\gamma\omega}. \]

4.8.2 手順2:振幅を求める

定常振幅は \(X\) の絶対値である。

\[ |X| = \frac{f_0} { \sqrt{ (\omega_0^2-\omega^2)^2 + 4\gamma^2\omega^2 } }. \]

よって,

\[ \boxed{ A(\omega) = \frac{f_0} { \sqrt{ (\omega_0^2-\omega^2)^2 + 4\gamma^2\omega^2 } } } \]

である。

4.8.3 手順3:位相遅れを求める

\[ X=Ae^{-i\delta} \]

と書くと, 分母の偏角から,

\[ \boxed{ \tan\delta = \frac{2\gamma\omega} {\omega_0^2-\omega^2} } \]

となる。

\(\omega<\omega_0\) では位相遅れは \(\pi/2\) より小さく, \(\omega>\omega_0\) では \(\pi/2\) より大きい。

4.8.4 手順4:共振周波数を求める

\(A\) を最大にするには,

\[ D(\omega) = (\omega_0^2-\omega^2)^2 + 4\gamma^2\omega^2 \]

を最小にすればよい。

微分すると,

\[ \frac{dD}{d\omega} = -4\omega(\omega_0^2-\omega^2) + 8\gamma^2\omega. \]

整理すると,

\[ \frac{dD}{d\omega} = 4\omega \left( \omega^2-\omega_0^2+2\gamma^2 \right). \]

したがって停留点は,

\[ \omega=0 \]

または,

\[ \omega^2 = \omega_0^2-2\gamma^2. \]

非零の共振角振動数は,

\[ \boxed{ \omega_{\mathrm{res}} = \sqrt{\omega_0^2-2\gamma^2} } \]

である。

4.8.5 手順5:共振ピークの存在条件

上式が実数となるためには,

\[ \omega_0^2-2\gamma^2>0 \]

が必要なので,

\[ \boxed{ \gamma<\frac{\omega_0}{\sqrt{2}} } \]

である。

この条件を満たさない場合も外力に対する定常振動は存在するが, 振幅は \(\omega=0\) から単調に減少し, 有限周波数の共振ピークは現れない。

4.8.6 手順6:平均散逸率

定常解を

\[ x(t) = A\cos(\omega t-\delta) \]

とすると,

\[ \dot{x}(t) = -A\omega\sin(\omega t-\delta). \]

抵抗による瞬間的な散逸率は,

\[ P_{\mathrm{diss}} = 2\gamma\dot{x}^2 \]

である。ここでは方程式を質量で割っているため, 単位質量当たりの散逸率を考えている。

1周期平均では,

\[ \left\langle \sin^2(\omega t-\delta) \right\rangle = \frac{1}{2} \]

なので,

\[ \boxed{ \left\langle P_{\mathrm{diss}} \right\rangle = \gamma\omega^2A^2 } \]

となる。

元の方程式が

\[ m\ddot{x}+c\dot{x}+kx=F_0\cos\omega t \]

なら,

\[ \boxed{ \left\langle P_{\mathrm{diss}} \right\rangle = \frac{1}{2}c\omega^2A^2 } \]

である。

4.8.7 極限による確認

  • \(\omega\to0\) \[ A\to\frac{f_0}{\omega_0^2} \] 静的な力に対する変位に一致する。

  • \(\omega\to\infty\) \[ A\sim\frac{f_0}{\omega^2} \] 高周波では慣性のため質点が外力に追随できない。

  • \(\gamma\to0\) \[ \omega_{\mathrm{res}}\to\omega_0 \] 無減衰系の共振条件に戻る。

4.8.8 答案での要点

  • 複素表示を用いると振幅と位相を一度に求められる。
  • 共振周波数は分母 \(D(\omega)\) の最小条件から求める。
  • \(\omega_{\mathrm{res}}\) の式だけでなく, 実数となる条件まで書く。
  • 散逸率では \(\langle\sin^2\rangle=1/2\) を用いる。

5 3. 中心力・有効ポテンシャル・軌道安定性

5.1 3.1 角運動量保存と平面運動

中心力は,

\[ \boldsymbol{F} = F(r)\boldsymbol{e}_r \]

のように, 常に中心と質点を結ぶ方向に働く。

原点まわりのトルクは,

\[ \boldsymbol{\tau} = \boldsymbol{r}\times\boldsymbol{F} = 0 \]

なので,

\[ \frac{d\boldsymbol{L}}{dt}=0, \qquad \boldsymbol{L} = m\boldsymbol{r}\times\dot{\boldsymbol{r}}. \]

したがって角運動量が保存される。

\(\boldsymbol{L}\) の向きが一定なので, 運動は \(\boldsymbol{L}\) に垂直な一平面内に限られる。極座標 \((r,\theta)\) を用いると,

\[ L=mr^2\dot{\theta}. \]

5.2 3.2 有効ポテンシャル

平面極座標での運動エネルギーは,

\[ T = \frac{1}{2}m \left( \dot{r}^2+r^2\dot{\theta}^2 \right). \]

角運動量保存から,

\[ \dot{\theta} = \frac{L}{mr^2} \]

なので,

\[ T = \frac{1}{2}m\dot{r}^2 + \frac{L^2}{2mr^2}. \]

したがって全エネルギーは,

\[ E = \frac{1}{2}m\dot{r}^2 + \frac{L^2}{2mr^2} + U(r). \]

ここで,

\[ \boxed{ U_{\mathrm{eff}}(r) = \frac{L^2}{2mr^2} + U(r) } \]

を有効ポテンシャルという。

動径方向の運動は,

\[ \frac{1}{2}m\dot{r}^2 + U_{\mathrm{eff}}(r) = E \]

という一次元問題として扱える。

  • \(E>U_{\mathrm{eff}}\):運動可能
  • \(E=U_{\mathrm{eff}}\):動径方向の折り返し点
  • \(E<U_{\mathrm{eff}}\):運動不可能

5.3 3.3 円軌道と安定性

円軌道では半径が一定なので,

\[ \dot{r}=0, \qquad \ddot{r}=0. \]

したがって円軌道半径 \(r_0\) は,

\[ \boxed{ U_{\mathrm{eff}}'(r_0)=0 } \]

を満たす。

さらに,

\[ U_{\mathrm{eff}}''(r_0)>0 \]

なら有効ポテンシャルの極小点なので安定,

\[ U_{\mathrm{eff}}''(r_0)<0 \]

なら極大点なので不安定である。

安定な円軌道付近で,

\[ r=r_0+\xi, \qquad |\xi|\ll r_0 \]

とおくと,

\[ m\ddot{\xi} = -U_{\mathrm{eff}}''(r_0)\xi. \]

したがって動径方向の微小振動角振動数は,

\[ \boxed{ \omega_r = \sqrt{ \frac{ U_{\mathrm{eff}}''(r_0) }{m} } } \]

である。

5.4 3.4 逆べき乗中心力

引力が

\[ F(r) = -\frac{k}{r^n} \qquad(k>0) \]

であるとする。

円軌道条件は,

\[ \frac{L^2}{mr_0^3} = \frac{k}{r_0^n}. \]

円軌道条件を用いて有効ポテンシャルの二階微分を整理すると,

\[ U_{\mathrm{eff}}''(r_0) = (3-n) \frac{k}{r_0^{n+1}}. \]

したがって,

\[ \boxed{ n<3 \text{ のとき円軌道は安定} } \]

である。

\(n=3\) では二次の項が消えるため, 高次の項まで調べる必要がある。

5.5 3.5 万有引力の有効ポテンシャル

万有引力では,

\[ U(r) = -\frac{GMm}{r} \]

なので,

\[ U_{\mathrm{eff}}(r) = \frac{L^2}{2mr^2} - \frac{GMm}{r}. \]

G <- 1
M <- 1
m <- 1
L <- 1.2
r <- seq(0.18, 5, length.out = 700)
Ueff <- L^2/(2*m*r^2) - G*M*m/r

plot(r, Ueff, type = "l",
     xlab = "r", ylab = expression(U[eff](r)),
     main = "万有引力場の有効ポテンシャル")
abline(h = 0, lty = 2)

円軌道半径は,

\[ r_0 = \frac{L^2}{GMm^2}. \]

万有引力は \(n=2\) に対応するので, 円軌道は安定である。

5.6 3.6 確認問題

ポテンシャル

\[ U(r) = -\frac{a}{r} + \frac{b}{r^2}, \qquad a>0 \]

中を運動する質量 \(m\) の質点を考える。角運動量の大きさを \(L\) とする。

  1. 有効ポテンシャルを求めよ。
  2. 円軌道が存在する条件と半径を求めよ。
  3. 円軌道の安定性を調べよ。
  4. 安定な円軌道まわりの動径方向微小振動角振動数を求めよ。

5.7 3.7 確認問題の詳しい解説

5.7.1 手順1:有効ポテンシャルを作る

有効ポテンシャルは,

\[ U_{\mathrm{eff}}(r) = \frac{L^2}{2mr^2} + U(r) \]

なので,

\[ U_{\mathrm{eff}}(r) = -\frac{a}{r} + \left( \frac{L^2}{2m}+b \right) \frac{1}{r^2}. \]

ここで,

\[ C = \frac{L^2}{2m}+b \]

とおくと,

\[ \boxed{ U_{\mathrm{eff}}(r) = -\frac{a}{r} + \frac{C}{r^2} } \]

と簡潔に書ける。

\(C/r^2\) は, 角運動量による遠心力的障壁と, 元のポテンシャル \(b/r^2\) を合わせた項である。

5.7.2 手順2:円軌道条件

円軌道半径 \(r_0\) は,

\[ U_{\mathrm{eff}}'(r_0)=0 \]

を満たす。

\[ U_{\mathrm{eff}}'(r) = \frac{a}{r^2} - \frac{2C}{r^3}. \]

したがって,

\[ \frac{a}{r_0^2} - \frac{2C}{r_0^3} = 0. \]

\(r_0^3\) を掛けると,

\[ ar_0-2C=0. \]

よって,

\[ \boxed{ r_0 = \frac{2C}{a} = \frac{ L^2/m+2b }{a} } \]

である。

物理的な円軌道には \(r_0>0\) が必要である。\(a>0\) なので,

\[ C>0 \]

すなわち,

\[ \boxed{ \frac{L^2}{2m}+b>0 } \]

が円軌道の存在条件である。

\(b\) が負であっても, 角運動量による \(L^2/(2m)\) が十分大きければ円軌道は存在する。

5.7.3 手順3:安定性

二階微分は,

\[ U_{\mathrm{eff}}''(r) = -\frac{2a}{r^3} + \frac{6C}{r^4}. \]

円軌道条件

\[ ar_0=2C \]

を用いると,

\[ U_{\mathrm{eff}}''(r_0) = -\frac{4C}{r_0^4} + \frac{6C}{r_0^4} = \frac{2C}{r_0^4}. \]

円軌道が存在する条件は \(C>0\) なので,

\[ U_{\mathrm{eff}}''(r_0)>0. \]

したがって,

\[ \boxed{ 存在する円軌道は安定 } \]

である。

この問題では, 円軌道の存在条件と安定条件が同じ \(C>0\) に帰着する。

5.7.4 手順4:動径方向の微小振動

\(r=r_0+\xi\) とおき, \(|\xi|\ll r_0\) とする。

有効ポテンシャルを \(r_0\) のまわりで二次まで展開すると,

\[ U_{\mathrm{eff}}(r) \simeq U_{\mathrm{eff}}(r_0) + \frac{1}{2} U_{\mathrm{eff}}''(r_0)\xi^2. \]

したがって,

\[ m\ddot{\xi} = -U_{\mathrm{eff}}''(r_0)\xi. \]

これは単振動の方程式なので,

\[ \omega_r^2 = \frac{ U_{\mathrm{eff}}''(r_0) }{m} = \frac{2C}{mr_0^4}. \]

よって,

\[ \boxed{ \omega_r = \sqrt{ \frac{2C}{mr_0^4} } } \]

である。

\(2C=ar_0\) を用いれば,

\[ \boxed{ \omega_r = \sqrt{ \frac{a}{mr_0^3} } } \]

とも書ける。

5.7.5 エネルギーの確認

円軌道のエネルギーは,

\[ E_0 = U_{\mathrm{eff}}(r_0) = -\frac{a}{r_0} + \frac{C}{r_0^2}. \]

\(r_0=2C/a\) を代入すると,

\[ \boxed{ E_0 = -\frac{a^2}{4C} } \]

である。\(C>0\) なら \(E_0<0\) となり, 束縛軌道であることとも整合する。

5.7.6 物理的解釈

  • \(b>0\) は中心付近の反発的な \(1/r^2\) 障壁を強め, 円軌道半径を大きくする。
  • \(b<0\) は中心向きの効果を強めるが, 角運動量が十分大きければ遠心力的障壁が残る。
  • \(C\le0\) では有効ポテンシャルに安定な極小が生じず, 円軌道は存在しない。

5.7.7 答案での要点

  • \(C=L^2/(2m)+b\) とまとめると計算が見やすい。
  • 円軌道条件 \(U_{\mathrm{eff}}'=0\) と安定条件 \(U_{\mathrm{eff}}''>0\) を分けて書く。
  • 二階微分の式へ円軌道条件を代入して符号を簡単にする。
  • 微小振動は \(r=r_0+\xi\) とおき, 有効ポテンシャルを二次展開する。

6 4. 総合予想問題

6.1 問題A:鉛直投げ上げとコリオリ力

緯度 \(\lambda\) の地点で, 地表から鉛直上向きに初速度 \(V\) で物体を投げる。空気抵抗を無視し, 地球自転角速度 \(\Omega\) の一次まで考える。

  1. 局所座標系における地球自転ベクトルを書け。
  2. 未摂動の鉛直速度を求めよ。
  3. 東西方向のコリオリ加速度を求めよ。
  4. 物体が元の高さへ戻るまでの東西方向変位を求めよ。
  5. 上昇中と下降中で偏向加速度の向きがどのように変わるか説明せよ。

6.1.1 解答方針

未摂動速度

\[ v_z(t)=V-gt \]

をコリオリ項へ代入する。上昇中と下降中では \(v_z\) の符号が反転するので, 東西加速度の向きも変わる。ただし, 上昇中に生じた東西速度が残るため, 往復の変位は単純には相殺しない。

6.2 問題B:地震計型の強制振動

地面が

\[ y(t)=Y_0\cos\omega t \]

で振動し, 質量 \(m\) がばね定数 \(k\), 減衰係数 \(c\) のばね・ダッシュポットで地面へ接続されている。質量の絶対変位を \(x(t)\) とし, 相対変位を \(z=x-y\) とする。

  1. \(z\) の運動方程式を導け。
  2. 定常振幅を求めよ。
  3. \(\omega\ll\omega_0\)\(\omega\gg\omega_0\) の極限を説明せよ。
  4. 変位計として適する周波数範囲を議論せよ。

6.2.1 解答方針

ばね力と減衰力は相対変位・相対速度に依存する。

\[ m\ddot{x} = -c(\dot{x}-\dot{y}) -k(x-y). \]

\(x=z+y\) を代入すると,

\[ m\ddot{z}+c\dot{z}+kz=-m\ddot{y}. \]

したがって, 地面加速度が外力として働く強制振動問題になる。

6.3 問題C:一般の逆べき乗力

中心力

\[ F(r)=-\frac{k}{r^n} \]

のもとで運動する質点について,

  1. 角運動量が保存することを示せ。
  2. 有効ポテンシャルを書け。
  3. 円軌道条件を求めよ。
  4. 円軌道の安定条件を求めよ。
  5. 安定な場合, 動径方向微小振動の角振動数を求めよ。
  6. 円運動の角振動数との比を求め, \(n=2\) の場合を解釈せよ。

6.3.1 解答方針

円軌道条件で \(L\)\(r_0\) の関係を作り, \(U_{\mathrm{eff}}''(r_0)\) を整理する。動径振動数と公転角振動数の比を求めると, 軌道が閉じるかどうかを考える手掛かりになる。

7 5. 直前確認チェックリスト

7.1 回転座標系

  • 慣性系と回転系の加速度の関係を書ける。
  • コリオリ力, 遠心力, オイラー力を区別できる。
  • 局所座標で \(\boldsymbol{\Omega}\) を成分表示できる。
  • 未摂動運動を使う一次近似を説明できる。
  • ベクトル積の符号を図または成分で確認できる。

7.2 減衰・強制振動

  • 特性根から不足減衰, 臨界減衰, 過減衰を分類できる。
  • 複素表示から定常振幅と位相を導出できる。
  • 共振周波数を分母の最小条件から求められる。
  • 共振ピークの存在条件を説明できる。
  • 平均散逸率と \(Q\) 値の意味を説明できる。

7.3 中心力と軌道安定性

  • トルクが0であることから角運動量保存を導ける。
  • 有効ポテンシャルを作れる。
  • 円軌道条件と安定条件を区別できる。
  • 有効ポテンシャルを二次展開し, 微小振動数を求められる。
  • 結果をエネルギー図と結び付けて解釈できる。

7.4 計算上の最終確認

  • 近似の次数を明記したか。
  • ベクトル積の順序と符号は正しいか。
  • 初期条件を積分定数へ正しく反映したか。
  • 平衡条件と安定条件を混同していないか。
  • 答えの次元は正しいか。
  • 赤道・極, 無減衰, 低周波・高周波などの極限は妥当か。