ジニ係数とローレンツ曲線

文学部棟 L510, tell 0757532446

2026-04-04

不平等の指標

  • 所得や資産の不平等の指標として最もよく使われているのがジニ係数
  • 変動係数や四分位範囲、四分位範囲を中央値で割った値(四分位範囲はスケールによって変わるが、中央値で割るとスケールに依存しなくなる)、20-80 パーセンタイル範囲が用いられることも
  • ジニ係数とセットで紹介されるのがローレンツ曲線

ジニ係数の定義

\(i\) さんの収入を \(x_i \; (i = 1, \, 2, \; \ldots, \; N)\)\(x_i\) の平均を \(\bar x\) とすると、収入のジニ係数は、 \[ \frac{\sum_{i = 1} ^ N \sum_{j=1} ^N |x_i - x_j|}{2 N^2 \bar x} \]

  • すべての値の組み合わせで差をとって、それらを平均し、最大値が \(1\) になるように標準化したのがジニ係数、といえようか。
  • テキスト本文の定義と少し式が違うが、両者は等しい。テキストは手計算向き、こちらはコンピュータ向きの表現

ジニ係数の計算例

  • あるサークルに属する学生 3人の所有資産(単位:万円)が、5, 20, 100だったとする。
  • \(N= 3\)\(\bar x = 41.7\) なので、ジニ係数は

\[ \begin{align} & (|5 - 5| + |5 - 20| + |5 - 100| + \\ & |20 - 5| + |20 - 20| + |20 -100| + \\ & |100 - 5| + |100 - 20| + |100-100| ) \div (2 \cdot 3^2 \cdot 41.7) = 0.507 \end{align} \]

  • 例題を解いてみよ

ローレンツ曲線の定義

  • 累積相対度数と累積相対資産/収入を折れ線グラフにしたものをローレンツ曲線と呼ぶ。
資産 相対度数 累積相対度数 累積資産 累積相対資産
5 0.333 0.333 5 0.04
20 0.333 0.667 25 0.20
100 0.333 1.000 125 1.00

3人の学生の資産のローレンツ曲線

  • 赤い折れ線がローレンツ曲線
  • 人数が多いと曲線に見える
  • 平等であるほど原点を通る傾き \(1\) の直線に近づく
  • 不平等であるほど、地を這うような曲線を描き、累積相対度数が \(1\) に近づくと急激に上昇する

前頁の解説

ジニ係数の幾何学的な計算

  • ローレンツ曲線とx軸で囲まれた領域は、左端の三角形と、二つの台形(を横に倒した形)に分けられる
  • 三角形と台形の面積をすべて求め、それらの総和を 0.5 から引いて2倍すれば、ジニ係数を計算できる
  • 三角形は、上底の長さが 0 の台形と考えることができるので、人数分の台形の面積を求めればジニ係数を計算できる

\[ \begin{align} (0.04 + 0)\times 1/3 \div 2 + \\ (0.04 + 0.2)\times 1/3 \div 2 + \\ (0.2 +1)\times 1/3 \div 2 &= 0.2467 \\ (0.5 - 0.2467)\times 2 &= 0.507 \end{align} \]

  • 表計算ソフトで計算する場合、こちらの計算法のほうが簡単かも?

おまけ:相対的貧困

  • 等価世帯可処分所得の中央値の2分の1未満の世帯を相対的貧困と呼ぶことが多い。
  • 可処分所得:所得から所得税、社会保険料を差し引いたもの
  • 世帯所得:世帯員の所得の合計
  • 等価世帯所得:世帯所得を世帯員数の平方根で割った値
  • 中央値ぐらいの豊かさの世帯よりも顕著に所得が低い(半分以下)世帯のこと

貧困率と格差は違う

  • 貧困線(貧困世帯とそうでない世帯を分ける基準)をまたぐ所得の変化しか反映しないから
  • 例えば、貧困線が 150万円で、相対的貧困率が 15% の社会があったとする。
  • 累進課税を強化して、等価世帯可処分所得が1000万円以上の世帯から 100万円ずつ特別税を徴収し、等価世帯可処分所得が 50万円未満の世帯に50万円ずつ配布したとする。しかし、この再分配によって貧困線を越えるほど等価世帯可処分所得が増える人はいないので、貧困率は 15% のまま。しかし、多くの研究者は格差は縮小したと考えるだろう。

私が思いつく相対的貧困批判

  • 世帯単位で考えるのが有効なのは、世帯員間の相互扶助がうまくいっている場合だけ。特定の世帯員が虐待され、栄養、衛生、健康状態に問題が生じていても、虐待される世帯員の困窮は反映されない
  • 中央値の 1/2 という線引きに根拠はなく、キリの良い数字というだけ。どこに貧困線を引いても、同じ結果になる(例えば、この10年で貧困率は上昇証している、とか、日本よりも米国のほうが貧困率は高い、といえる)場合も多いが、そうなる保証はなし。
  • 「貧困」というラベルはスティグマとなりうるので、相対的貧困と名指された人たちは不快に感じるかも

相対的はく奪 relative deprivation

  • 所得ではなく、「何ができるか」を調べる
  • 例えば、「病気の時は必要な薬を買ったり、病院に行ったりできる」「ときには友人や知人を自宅に招いて一緒にお茶を飲むことができる」「困ったことがあったら相談できる友人や知人がいる」などなど、実際にそうしているかどうかではなく、やろうと思えばできるかどうか
  • 実質的な困窮の程度を調べるほうが、「貧困」かどうかを調べるよりも生産的かも
  • ただし、質問が多数になるし、どんなことを尋ねるべきかはっきりしないのが、難点
  • ケイパビリティとか社会的排除とかをキーワードとする研究の一部も同じような議論を
  • 「相対的はく奪」という語は、分野によって異なる意味で用いられるので注意!