第1回 計量経済学のキーワード(1)
ある人間の知性と他の人間の知性とを区別する根本的でもっとも特徴的な点は何でしょうか. それは証拠となるものを正しく判断できる能力です. ―ジョン・スチュアート・ミル『大学教育について』
- 原因と結果の関係を因果関係という.原因が結果に与える効果を因果効果という.
- 科学的な証拠に基づいて政策を決めることをエビデンスに基づく政策形成(EBPM)という.
- 2つの群の一方に処置を行い,他方に処置を行わずに効果を比較する実験を対照実験という.処置を行う群を処置群,比較対照とする群を対照群,処置群と対照群に対する効果の差を処置効果という.
- 実験で得たデータを実験データ,観察で得たデータを観察データという.実験データなら処置効果が簡単に求まる.観察データで処置効果を求めるには,外的条件の統制に工夫が必要.
1 政策の効果(p. 2)
定義 1 2変量間の直線的な関係を相関関係という.
例 1 (1人当たり)警察官数と犯罪発生率.
定義 2 原因と結果の関係を因果関係という.
例 2 警察官が多いと犯罪発生率が下がる. 犯罪発生率が高いと警察官を増やす.
定義 3 原因が結果に与える効果を因果効果という.
例 3 警察官数を1%増やすと犯罪発生率はx\%下がる.
注釈. 相関係数で因果効果は測れない.
2 EBPM(p. 4)
定義 4 科学的な証拠に基づいて政策を決めることをエビデンスに基づく政策形成(Evidence-Based Policy Making, EBPM)という.
注釈. 目的に対する政策の因果効果の「定量的な」計測・評価が求められる.
3 実験研究と観察研究
3.1 実験研究(p. 6)
新薬の効果を実験で計測する.
定義 5 2つの群の一方に処置(介入)を行い,他方に処置を行わずに効果を比較する実験を対照(統制)実験という.
注釈. 処置の有無以外の外的条件を統制し,偽薬等を用いて実験者・被験者に処置の有無が分からないようにする.
定義 6 処置を行う群を処置(介入)群という.
定義 7 処置を行わず,比較対照とする群を対照(統制)群という.
定義 8 処置群と対照群に対する効果の差を処置(介入)効果という.
注釈. 処置効果は因果効果と解釈できる.
定義 9 処置群と対照群を無作為に割り当てる対照実験を無作為化比較対照試験(Randomized Control Trial, RCT)という.
注釈. 外的条件を簡単かつ確実に統制でき,平均処置効果(=処置群と対照群の平均値の差)が簡単に求まる.
3.2 観察研究(p. 9)
警察官の増員が犯罪発生率を下げる効果の実験は難しい.
定義 10 実験で得たデータを実験データという.
注釈. 実験データなら処置効果が簡単に求まる.
定義 11 観察で得たデータを観察データという.
注釈. 観察データで処置効果を求めるには,外的条件の統制に工夫が必要.
まとめ
相関関係, 因果関係, 因果効果, エビデンスに基づく政策形成(EBPM), 対照(統制)実験, 処置(介入)群, 対照(統制)群, 処置(介入)効果, 無作為化比較対照試験(RCT), 実験データ, 観察データ