ヘルスインフォマティクス入門

Yusuke Matsui
Biomedical and Health Informatics Unit (BMHI),
Department of Integrated Health Sciences,
Graduate School of Medicine, Nagoya University,
Systems Biology Division,
Integrated Glycan-Big Data Center (iGDATA),
Institute for Glycobiology Core Research (iGCORE)

2024-10-04

ヘルスインフォマティクスの役割について

健康医科学、医療、ケアにおけるインフォマティクスの意義
- それぞれの領域におけるインフォマティクスの役割は異なる
- 研究の本質的な対象も領域ごとに異なる
健康医科学におけるインフォマティクスの役割
- 科学的データを効率的・適切に扱うための技術
- データを使って知識を生成し、科学を支援する
ケアにおけるインフォマティクスの役割
- 「介入」だけでなく「対話」のプロセスも対象
- 「質的」側面を豊かにするための技術
- 対話やケアの質を支えるツールとしての役割

インフォマティクスとは、データに基づいて隠れた対象を表す技術

インフォマティクスは技術である
- 目的を達成するための手段
- ゲノム解析や情報の記録を支援する手段
ハイデガーの技術観
- 技術は「現出させる」存在の仕方
- 物事や存在を「隠れた状態」から「露わにする」
- 技術を通じて世界を構成し、現前させる
インフォマティクスの役割
- データを変換して、分子現象や健康状態を意味する知識に変換
- 隠れた世界（生命現象）を対象化し、学問的に捉える

健康における「集団 vs 個」「量的 vs 質的」の対立軸

ヘルスインフォマティクスは主に定量的な情報を扱う
- 対象は「体」や「システム」としてのヒト
- 主に物質的側面やシステム的側面に焦点
物質としての体
- 組織と体液の集合体
- イメージング技術で組織や細胞、分子レベルの動態を可視化
- 例: MRI、CT、脳波（EEG）、筋電図（EMG）
システムとしての体
- 神経情報システムや運動情報の定量化
- 加速度計、モーションキャプチャ技術で動作や姿勢、歩行パターンを測定

分子レベルでの体の理解

多細胞社会システムとしての体
- 約30兆個の細胞から成る
- 細胞内外には小分子、タンパク質、糖鎖が存在
ゲノムと生命活動
- DNA配列（ゲノム）は生命活動を規定する設計図
- mRNAがタンパク質合成を媒介
解析技術
- シークエンサーによるゲノム解析
- 質量分析計によるタンパク質解析

集団に基づくエビデンスと個別性の排除

定量化の側面
- 健康医科学・医療での集団定量化は、エビデンスを確立するためのもの
- 科学的に健康の指標、治療方法、リスクが流通するために不可欠
エビデンスの本質
- 集団を対象とした統計的な指標
- 集団平均を重視するため、個々の特性が排除されることがある

「心」としての個別性とその重要性

個別性の高い「心」
- 他者には見えない、個人の経験や感情
- 「人」としての生きる力の源
心と体の関係
- 心と体は密接に関連
- 物質としての体ではなく、心から見た体が存在

質的アプローチと「生きた経験」の理解

質的アプローチの重要性
- 定量化では捉えられない個人の内的経験や感情を深く理解
- データや数値では表せない部分を対話や観察で明らかにする
個人の文脈や背景を重視
- 個人の物語、価値観、社会的文脈を理解する
- 例: 患者の感情や生活環境を理解し、適切なケアを提供

全人的ケアにおける質的アプローチの重要性

全人的ケアの追求
- 心と体の両方を理解し、アプローチする
- 個別の経験や心のあり方を取り入れたケア
質的アプローチの新たな視点
- 科学的アプローチで見逃されがちな「個別の経験」を重視

精神的健康と対話の重要性

精神的健康における質的アプローチ
- 単に症状や行動を数値化するだけでは理解しきれない
- 患者の感情や背景を対話で丁寧に聞き取り、理解することが必要
適切な治療とサポート
- 対話を通じた理解が、より効果的な治療に繋がる

科学と対話の統合による新たなヘルスケアの可能性

エビデンスと個別性の融合
- エビデンスだけでは捉えられない個々の内面的世界を理解
- 科学的データと対話を組み合わせた新しいアプローチ
今後のヘルスケア
- 科学と対話を統合することで、より包括的なヘルスケアを実現

インフォマティクスの意義

データと知識の媒介

生データから知識への変換
- 混沌としたデータを知識に変換する「媒介装置」
- 生データ（例: 心拍データ）は単なる数値の羅列
- データを人が理解できる形に「言語化」する必要がある
パターンとトレンドの発見
- データを組み合わせてパターンやトレンドを見出し、健康管理に役立てる
- 例: 心拍データからストレスの兆候を抽出し、メッセージで通知

数理モデル化と推論

データから知識を得るための数理モデル
- データに基づいた数理モデルを作成し、知識を拡大
- 例: 膨大なデータから推論可能なモデルを構築
数理モデルの条件
- 良い数理モデルの条件については別途議論

仮説の拡大・一般化

膨大なデータからの知識拡大
- 大規模なデータを用いて部分的な知識を量的に拡大
- 例: 次世代シークエンサーにより遺伝子データの定量化が飛躍的に増加
インフォマティクスの役割
- 新たな仮説や知識を得るために膨大なデータを処理
- 既存の仮説駆動型研究を支援

解析作業のオートメーション化

解析プロセスの自動化
- 科学的再現性を保つためにデータ処理と解析をオートメーション化
- サブプロセスごとに独立した解析を行い、結果を統合
解析プロセスの段階
1. データの収集と整形
2. データ解析と特徴抽出
3. モデル構築と予測
4. 結果の可視化と解釈
自動化技術の活用
- APIやダッシュボード、クラウドプラットフォームを通じてのデータ提供

知識の組織化と共有

データベースの意義
- 散らばったデータを集積し、統一された形式で整理
- データを共有し、アクセスしやすい形にする
心拍データの例
- 異なる背景や条件で収集されたデータを統合し、パターンや変化を明確化

社会と科学の橋渡し役としての役割

オープンサイエンスの推進
- データを公開し、広く科学コミュニティや社会全体で利用できる形にする
- 例: COVID-19データの迅速な共有で、ワクチン開発が加速

対話の媒介装置

自己対話と他者との対話
- 生理学的データ（例: 心拍、睡眠パターン）を通じて自己認識を高める
- ケアラーと患者の対話を支援

ナラティブと生理学的情報の統合

自然言語処理技術の活用
- 個人の経験やナラティブを言語化し、分析
- ナラティブと生理学的情報を統合し、精神と身体のギャップを埋める

自然言語処理技術によるケアの支援

パーソナライズド・ストーリーの生成
- 自然言語処理技術を用いて、個人の経験をケアラーに適切に伝達
- 対話を深めるための新たなインフォマティクス技術

ヘルスインフォマティクス研究とは何をする学問か

ヘルスインフォマティクスの3つの分野
- 健康医科学、医療、ケアに分かれる
- 膨大なデータを扱い、知識へ変換する技術開発が中心

1. 健康医科学におけるインフォマティクス

目的: 生命の原理・法則を解明し、健康に応用
役割:
- 1.1 測定技術の情報処理技術開発
  - オミックスデータ（ゲノム、プロテオーム等）の管理と分析
- 1.2 膨大な情報を知識に変換する技術
  - 仮説の立案・検証を支援
- 1.3 ビッグデータを整理・流通させる技術
  - データの効率的な整理・アクセス提供

2. 医療におけるインフォマティクス

目的: 診断・治療・予防の個別化を促進
役割:
- 2.1 バイオマーカーの探索と予測技術
  - 疾患・治療反応の予測
- 2.2 リアルタイム情報解析技術
  - 生体データのリアルタイム解析
- 2.3 ビッグデータ解析技術
  - 医療データから有益な知識を抽出
- 2.4 医療データの整理・流通技術
  - データ駆動型医療の促進

3. ケアにおけるインフォマティクス

目的: 患者との対話・自己対話を支援
役割:
- 3.1 自己対話を促進するインターフェース
  - 自主的な健康管理を支援
- 3.2 ケアラーと患者の対話を促進
  - 情報共有をサポートし、ケアの質を向上
- 3.3 ケアプランの個別化と最適化
  - 精密な個別化ケアプランの作成
- 3.4 ケアデータの整理と共有
  - ケアチーム全体の連携を強化

ヘルスインフォマティクス研究とはどのような営みか

目的: 健康を包括的に支援する技術
- 健康医科学データや医療データの活用
- 個別化治療法やケアの支援
- 患者と医療従事者の対話の促進
次のステップ
- どのようなテーマを立てるべきか？
- どのような問いを立て、どのように明らかにしていくのか？

技術研究のあり方

技術研究の多角的な側面

技術の研究とは
- 新しい技術の創造だけでなく、技術の理解、応用、影響評価を含む
- 技術を活用して現実の課題を解決する

1. 技術の理解と評価

強みと限界の評価
- 技術が解決できる問題と、その限界を理解
負の側面の検討
- プライバシー侵害やバイアスなど、リスクを考慮
倫理的側面の考慮
- 技術の使用が倫理的に適切であることを確認
再現性と精度の評価
- 異なる条件下で技術が安定して高精度に動作するか確認

2. 技術の開発と公開

技術の開発プロセス
- 設計からテスト、フィードバックまでを体系的に進める
オープンサイエンスと公開
- 技術をオープンにして検証し、透明性と信頼性を向上
持続可能な技術開発
- 長期的に使用可能で、サポートされ続ける技術を開発

3. 技術を活用した課題解決

課題の明確化と適用
- 解決すべき課題に技術を適切に適用する
技術の社会実装
- 社会で使用するためのインフラや教育・訓練を整える
フィードバックと改善
- 技術の使用状況からフィードバックを収集し、継続的に改善

技術研究の意義

複合的なプロセス
- 技術の理解、評価、開発、公開、そして課題解決を含む
技術の多角的評価
- 強み・弱み、倫理的問題、社会実装の準備など、広範な視点から技術を評価
技術の社会的価値
- 継続的な改善とサポートにより、社会に貢献する技術を開発する

ヘルスインフォマティクス研究の場合

技術研究のテーマ設定
- 医療やケアの質を向上させるための技術研究
- 技術開発、医療現場や患者のニーズ、倫理的配慮を考慮する

1. 研究テーマ設定における重要な要素

1.1 医療現場のニーズと問題点の特定

医療現場やケアにおける問題点の特定
- データ管理と共有の効率化
- 診断や治療の精度向上
- 患者とのコミュニケーション支援
研究テーマの設定
- 問題解決のために技術をどう適用するか

1.2 データの種類とその特性を考慮する

多様なデータの取り扱い
- ゲノムデータ、オミックスデータ
- 電子カルテ、診療記録
- リアルタイムモニタリングデータ（ウェアラブルデバイス）
テーマ設定時の考慮ポイント
- データの質や欠損値への対策
- データ統合の方法

1.3 技術的アプローチと社会的課題のバランス

技術と課題のバランス
- AI、機械学習、ビッグデータ解析、センサーネットワークなど、適切な技術を選定
- 社会的課題や医療現場のニーズに適用
現実的な運用性
- コストや運用の負担も考慮
倫理的・法的側面の配慮
- プライバシー保護、法規制、倫理的課題（例: AIによる誤診の責任）

1.4 哲学的・倫理的探究および質的研究

倫理的影響
- AIのバイアス、プライバシー保護、技術導入の責任
哲学的探究
- 技術が健康や身体性、自律性に与える影響
質的研究
- 技術導入による健康意識や行動、患者と医療従事者の関係性の変化

テーマ設定のプロセス

テーマとは
- 探求する課題や範囲を示すもの
- 例: 「個別化医療のための統合解析技術」「ウェアラブルデバイスが個人の健康意識に与える影響」

2.1 技術的アプローチにおけるテーマ設定のプロセス

課題領域の明確化
- 医療やケアの問題領域を特定し、解決すべき課題を設定
- 例: 医療データの管理、リアルタイムモニタリングの精度向上
文献調査の実施
- 既存技術の理解、技術の限界や解決されていない課題を確認
- AI、ビッグデータ、機械学習など最新技術の動向を調査

技術の選択と適用範囲の決定

最適な技術の選定
- AI、機械学習、ビッグデータ解析、センサーネットワークなどを考慮
- 技術と現場のニーズをバランスよく考慮
適用範囲の決定
- 選定した技術がどの範囲まで適用できるか検討

データの収集と管理の計画

データの収集方法
- 既存データベースや公共データベースの活用
- データのプライバシー保護や法的規制への対応も計画

成果の評価方法の設定

技術の成果を評価
- 技術の性能評価、医療現場での適用可能性、コスト効果を考慮
- 評価基準や評価手法の設定

哲学的・倫理的・質的アプローチにおけるテーマ設定のプロセス

哲学的・倫理的・質的研究
- 技術の社会や人間への影響を理解し、評価することを中心とする
- 文献調査が特に重要な要素

2.2 哲学的・倫理的・質的アプローチのテーマ設定プロセス

研究対象の特定
- 技術が引き起こす倫理的課題や社会的影響を特定
- 例: プライバシー、バイアス、責任問題
文献調査の実施
- 既存の哲学的・倫理的理論や質的研究の成果を参照
- 技術倫理に関する主要な理論やケーススタディを活用

研究アプローチの決定

質的データ収集方法や哲学的議論の手法を決定
- インタビューや観察、哲学的概念を論じる手法を選定
データの収集と倫理的配慮
- インフォームドコンセントを確実に取り、個人のプライバシーを保護

成果の解釈と意味付け

個別のケースや理論的枠組みに基づく解釈
- 例: 技術が個人の自律性に与える影響を分析
質的データの解釈
- 個人の経験や価値観に基づいたデータを解釈し、技術の利用にどのような意味があるかを考察

ヘルスインフォマティクス研究の具体的テーマ例

4.1 技術的アプローチの具体例

個別化医療のためのデータ統合技術
- AIや機械学習を用いて、ゲノム、臨床データ、環境データを統合
リアルタイムモニタリングと早期異常検出
- ウェアラブルデバイスでの生体データモニタリング
患者と医療従事者間のコミュニケーション支援システム
- 患者が健康データを医療従事者と共有するシステム

4.2 哲学的・倫理的アプローチの具体例

AI診断における倫理的影響の評価
- AIによる診断におけるバイアスや公正性を評価
プライバシー保護とデータ共有のバランス
- 医療データの共有とプライバシー保護の倫理的課題を探る
テクノロジーによる医療の自律性への影響
- AIやロボットの導入が医師や患者の自律性に与える影響を探究

4.3 質的研究の具体例

ウェアラブルデバイスが健康意識に与える影響
- インタビューを通じ、デバイス使用が健康意識に与える影響を分析
患者と医師間のデジタルコミュニケーションの質的分析
- デジタルツールを通じたコミュニケーションの質を評価
デジタル健康データの使用による自己管理の質的研究
- リアルタイムでの健康データ提供が自己管理に与える影響を探る

「問い」を設定する

テーマから問いへ
- テーマは問題領域
- 具体的に探究すべき問いを設定する

5.1 良い問いの条件

1. 明確で具体的

具体的であれば研究の方向性が明確になる
- 例:
  - 漠然とした問い: 「AIは医療を改善するか？」
  - 明確な問い: 「AIによる診断支援は従来の方法と比較して診断精度をどの程度向上させるか？」

2. 結論を導ける

結果を評価できる問いに設定
- 例:
  - 結論が曖昧な問い: 「AI診断システムは正確か？」
  - 結論を導ける問い: 「AI診断システムは、従来の手動診断と比べて正確さと信頼性にどのような差があるか？」

3. 反証可能性

反証可能な問いは科学的に理想的
- 例:
  - 反証が難しい問い: 「AIはすべてのケースで優れているか？」
  - 反証可能な問い: 「AIは特定の病気で従来手法と比べて診断精度が高いか？」

4. 実行可能

リソースやデータの現実的な制約を考慮
- 例:
  - 実行が難しい問い: 「すべての医療機関でのAI導入の影響を評価する」
  - 実行可能な問い: 「特定の病院でのAI診断システム導入が診療時間に与える影響を評価する」

5. 創造的で新しい視点を含む

新しい視点や未解決の問題に焦点を当てる
- 例:
  - 一般的な問い: 「AIが診断を改善するか？」
  - 新しい視点: 「AI診断された患者は、自己効力感にどのような影響を受けるか？」

6. 各アプローチでの問いの立て方

技術的アプローチ

特定技術の性能・効果を測定
- 例: 「AIモニタリングは異常検出率をどの程度向上させるか？」
技術開発の改善点を探る
- 例: 「ノイズに頑健な異常検出アルゴリズムの新しい手法は有効か？」

哲学的・倫理的アプローチ

技術の倫理的影響を問う
- 例: 「AIによる診断が患者の自律性に与える影響は？」
データ共有とプライバシー保護のバランス
- 例: 「医療データの共有による利益とプライバシー保護のバランスはどう評価されるべきか？」

質的アプローチ

技術導入が人々の生活に与える影響を探る
- 例: 「ウェアラブルデバイスのリアルタイム提供が自己認識に与える影響は？」
デジタルコミュニケーションが医療現場での関係性に与える影響
- 例: 「デジタルツールを介した患者と医師のコミュニケーションは信頼関係にどう影響するか？」

テーマ例に対応した問いの例

ヘルスインフォマティクスにおける研究テーマに対応した具体的な問い

個別化医療のためのデータ統合技術

問い:
- 異なる種類の医療データ（ゲノムデータ、臨床データ、環境データ）を統合する際に、最も効果的なアルゴリズムは？
- ゲノムデータと臨床データの統合で、治療精度はどの程度向上するか？
- データ統合における欠損やバイアスが予測精度に与える影響は？

リアルタイムモニタリングと早期異常検出

問い:
- ウェアラブルデバイスでリアルタイムに異常検出するアルゴリズムの精度は？
- リアルタイム性を維持しつつ、プライバシー保護をどう実現するか？
- 異常通知システムで患者の安全性やケアの質はどの程度改善されるか？

患者と医療従事者間のコミュニケーション支援システム

問い:
- 患者が症状を理解するために効果的なインターフェースは？
- デジタルコミュニケーションで信頼関係や診療の質にどのような変化があるか？
- 患者と医療従事者間での情報共有を最適化するための技術条件は？

AI診断における倫理的影響の評価

問い:
- AI診断アルゴリズムにおけるバイアスや不公平性を防ぐ方法は？
- AI診断で誤診が発生した場合、責任は誰が負うべきか？
- AIの診断支援で、医師の診断精度や治療結果はどう変わるか？

プライバシー保護とデータ共有のバランスに関する哲学的考察

問い:
- 医療データの共有とプライバシー権のバランスはどう取るべきか？
- 匿名化やセキュリティ技術で個人のプライバシーはどれほど守れるか？
- 同意なくデータを共有することの倫理的問題は？

テクノロジーによる医療の自律性への影響

問い:
- AIやロボットが医師や患者の意思決定に与える影響は？
- 技術が医療現場で役割を補完せず、置き換える場合の倫理的変化は？
- 自律性が損なわれた場合、医療現場での問題は？

ウェアラブルデバイスが個人の健康意識に与える影響の質的研究

問い:
- ウェアラブルデバイスによる健康データのフィードバックが生活習慣に与える影響は？
- リアルタイムデータ提供がユーザーの行動にどう影響するか？
- 健康管理における自己効力感をどの程度向上させるか？

患者と医師間のデジタルコミュニケーションの質的分析

問い:
- デジタルコミュニケーションは従来の対面とどう異なるか？
- 遠隔医療で信頼関係や診療の質はどう変化するか？
- デジタル対話での心理的負担や不安感はどう軽減できるか？

デジタル健康データの使用による自己管理の質的研究

問い:
- リアルタイムの健康データが自己管理にどう影響するか？
- デジタル健康データが治療参加意識をどう変えるか？
- 健康データがどのように解釈され、行動に反映されるか？

学際領域としてのヘルスインフォマティクスを研究するための土台とは

学際領域の特徴
- 医療、健康、データ科学、情報技術が交差する分野
- 確立された教科書やカリキュラムが少ない
- 複数分野を統合し、テーマや問いを作り出すプロセスが重要

研究を進めるプロセス

複数の分野を包括するテーマを立てる
- テーマに沿って知識体系を整理・統合する
新たな独自の問いを作り、深く掘り下げる
- 研究における重要な意義

研究のための基礎の重要性

基礎知識がなければ関連知識の統合が困難
- まずは基礎をしっかりと習得し、その上で多分野を横断する
ヘルスインフォマティクスの基礎
- インフォマティクス技術が軸
- それを基に健康科学、医療、ケアの課題を理解し、応用

インフォマティクスの基礎

データ収集、管理、解析を通じて有益な情報に変換する技術や理論

1. データの収集と管理

データ収集の手法
- 電子カルテ、バイオセンサー、オミックスデータなど
データ管理の技術
- クラウドサービス、分散データベース、セキュリティ対策

2. データの解析と可視化

統計的解析
- 疾患リスク予測、治療効果の評価
機械学習とAI
- 予測モデルの構築、異常検出
データの可視化
- グラフ、ダッシュボードの作成

3. システム設計とパイプライン構築

パイプライン構築
- 複数の処理ステップを自動化し、効率化
並列処理と分散処理
- 大量データを短時間で処理

ヘルスインフォマティクスの問題領域

問題領域を特定し、インフォマティクス技術で解決策を提供

1. 健康科学の問題領域と基礎知識

健康リスク予測、個別化健康モニタリング
- 生物学、生理学、疫学、データ解析
問題領域の特定
- リアルタイム健康モニタリング、健康リスク予測

2. 医療の問題領域と基礎知識

診断精度向上、治療の個別化
- 分子生物学、医療情報学、データサイエンス
問題領域の特定
- 診断支援システムの開発、医療データの共有

3. ケアの問題領域と基礎知識

患者との対話支援、ケアプランの個別化
- ケア理論、コミュニケーション支援技術、倫理
問題領域の特定
- デジタルコミュニケーション支援、ケアにおける倫理問題

研究に必要な知識基盤

インフォマティクス技術の深い理解
健康科学、医療、ケア分野の専門知識
データの倫理的取り扱い

研究のために学ぶべき大きなカテゴリ

1. 生命科学

順序: 生物学 → 分子生物学 → 生理学 → 神経科学

2. データサイエンス

順序: 統計学 → プログラミング（R/Python） → 機械学習 → ビッグデータ解析

3. 情報工学

順序: Linux操作 → データ管理 → パイプライン構築 → 並列処理

4. 医療・ケアの倫理と哲学

順序: 倫理学 → 医療・ケアの倫理 → ケア哲学