Introduction

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Objectives

 このRPubsは,Stephen Redding教授らによる数量的空間経済学(quantitative spatial economics; QSE)のモデルに関して,そのコンセプトとRでの実装例をメモ書き程度にまとめたものです.このRPubsの著者の専門は空間情報科学(geographic information system; GIS)や都市計画であり,都市・空間経済学の理論・実証についてはよく分かっていない部分が多いので,もしも「ここがおかしい」という点があれば,ご指導ご鞭撻いただけると大変ありがたいです.また,QSEの理論部分を既にご存知であれば,Simulationに直接飛んでいただいても構いません.
 なお,このまとめは,主に以下の論文に依拠してなされています.理論部分はRedding & Turner (2015)とRedding (2020)に,実装例はRedding & Rossi-Hansberg (2017)に依拠しています.以下で出てくる数式番号は,書誌情報の末尾に付いている著者の頭文字と合わせて表記します(例えば,Redding (2020)の式(1)に対応する場合は,(R1)と表記).

 このRPubsは,空間経済学の理論や,それに関連する実証分析について,ある程度事前知識を持った方向けに書かれています.空間経済学に関する基礎知識を身に付けたい場合は,以下の書籍(通称:Spiky本)のChapter 7-9,11を通読することをお勧めします.このページ内で示されている結果のいくつかについては,Spiky本に詳しい導出過程が載っているので,脚注で適宜,Spiky本内の対応する式番号を示します.

QSEは,空間経済学のほかに,新貿易理論の知見が多く盛り込まれた分野です.新貿易理論に関して基礎知識を身に付けたい場合は,以下の書籍の特に3章までを事前に学ぶことをお勧めします.学部中上級レベルの消費者・生産者理論から始めて,新貿易理論の代表的なモデルが学べます.

What’s QSE?

 Krugman (JPE 1991)から続く空間経済理論や,それに関連する実証分析は,人口・経済活動分布の不均一さ(spikiness)に対しての深い洞察を与える,極めて重要な学問分野の1つです.物理的地理と,企業と家計の空間的相互作用を同時に考慮することにより,何故・どのようにして,その場所に集積が発生するかのメカニズムを解き明かすことを可能にしたという点で,空間経済学の貢献は大きいものであると思います.
 しかし,空間経済学の理論・実証研究には,いくつかの点で乗り越えるべき課題があることが指摘されています.理論の側面からは,モデルの複雑さが課題となっています.これまでの理論分析ではしばしば,線や円状に並ぶ少数地域によって成る世界が扱われてきました.一方,こうした空間構造は現実世界のものとは乖離しています(無論,これら少数地域を対象とした理論分析は,モデルの振る舞いに関する知見を蓄積していく上でとても重要で,それら知見はこのページで扱う手法・モデルを吟味する上でも不可欠です).
 実証の側面からは,多くの研究が誘導型推定に基づくものであるという点が課題として指摘されています.近年の誘導型に基づく実証研究は,極めて高い識別精度でパラメータを推定することを可能とする,自然実験等のアプローチの発展に伴って進歩してきました.しかし,誘導型で推定される実証モデルと,理論モデルとの繋がりが不明確であることも多く,そのような場合は,推定されたパラメータへの経済学的解釈に困難が生じます.加えて誘導型推定では,政策のようなショックが起きても不変なディープ・パラメータとそうでないパラメータとを,一般に区別することができません.
 これらの理論・実証両面の課題に取り組むべく考案されたアプローチの1つがQSEです.QSEはそれ単独で発展してきたモデルというよりは,国際貿易論の分野における,Eaton & Kortum (ECTA 2002)に代表される数量的貿易モデルに端を発した構造型のアプローチで,非格子状に配置された多くの地域を柔軟にモデリングできる特徴があります.QSEの特徴をざっとまとめると,以下のようになると思います.

  • 第一・二の自然両方により,場所間の差異をモデル化する.
    • 第一の自然:外生的な場所の特徴(気候,利用可能な土地).
    • 第二の自然:集積力・分散力.
  • 観測不能な属性(例:アメニティ)について反転可能.
    • 内生変数の観測データとモデル・パラメータの値を所与として,観測不能かつ外生的な場所の特性について解くことが可能.

 特に誘導型推定に比したQSEの特徴は何より,要素移動と集積を考慮した一般均衡分析ができることです.即ち,政策介入や空間的なショックが及ぼす一般均衡効果を計測できる点が,アドバンテージの1つです.これまでQSEのモデルで扱われてきた政策・ショックの事例(例:高速道路の敷設,地下鉄敷設,ベルリンの壁崩壊,ロンドン大空襲)はいずれも,地域の人口や所得を始めとする様々な変数に対して多方面から影響を与えます.その意味で,一般均衡効果を計測することは,分析上極めて重要であると言えるでしょう.
 QSEにおける一般均衡効果の計測は,反実仮想シミュレーションに基づいて行われます.即ち,データやそれを均衡のアウトカムとして理論的に説明するディープ・パラメータ(の推定値)を用いて作り出された反実仮想的な状況と,実際の状況とを比較することを通じて,政策・ショックの効果を検証する,というのが分析の主たるステップです.

Updates

  • ページを公開しました(2022年7月5日).
  • いくつかのタイポを修正しました(2023年2月1日).
  • 各式に詳細な導出を追加しました(2023年3月14日).

Acknowledgments

 本ページの公開に際し,山岸敦さんのお取り計らいによって,Redding教授から許諾を頂きました.お二人のご厚意に感謝申し上げます.また,タイポの修正や式の詳細な導出の際には,慶應義塾大学の小野あかりさんに多大なご協力を賜りました.ここに御礼申し上げます.

Theory

Basic Structure

 今回紹介するモデルは,Helpman(1998)の多地域版に基づきます.モデルで扱う経済の特徴は,以下の通りです.

  • 経済は,\(n\in N\)の添え字で表される場所で構成される.
    • \(n\)で消費地,\(i\)で生産地を表す.
  • 各場所で外生的な床面積供給(\(H_i\))がなされる.
  • 経済は全体として\(\overline{L}\)だけの労働者で構成される.
  • 各労働者は,不効用ゼロで非弾力的に1単位の労働を供給.
    • 「非弾力的」というのは,「働くか否か」「どれ位時間働くか」という意思決定は考えないという意味.
    • ここでの「効用」は余暇を意味する.
  • 労働者は地理的に完全移動自由.
    • なので,均衡では全地域で均衡実質賃金が等しくなる.
  • 場所間の財の輸送には,氷塊型費用\(d_{ni}=d_{in}\ge 1\)が必要.
    • 1単位の財が地域\(n\)に届くために,\(d_{ni}\)単位の財を運ぶ必要がある.
    • 財の工場渡し価格が\(p_{i}\)の場合,場所\(n\)での価格は\(p_{ni}=p_{i}d_{ni}\)
  • モデルの外生変数は生産性\(A_{n}\),アメニティ\(B_{n}\),貿易費用\(d_{ni}\)

Consumer Preferences

 消費者の選好は,交易財の消費指数\(C_{n}\)と,非交易財(床面積)の消費\(H_{n}\)でなるものとします.交易財・非交易財に関する効用関数は,以下のようなコブ=ダグラス型を仮定します. \[ V_{n}=\left(\frac{C_{n}}{\alpha}\right)^{\alpha} \left(\frac{H_{n}}{1-\alpha}\right)^{1-\alpha}B_{n} \tag{RR1} \]  一方,交易財に関する部分効用\(C_{n}\)には,以下のようなCES型を仮定します. \[ C_{n}= \left[\sum_{i \in N}^{} \int_{0}^{M_{i}}c_{ni} \left(\psi\right)^{\frac{\sigma-1}{\sigma}}d\psi\right]^{\frac{\sigma}{\sigma-1}} \tag{RR2} \] ここで\(\sigma\)はバラエティ間の代替弾力性を表し,\(\sigma>1\)として,バラエティが代替的である(補完的ではない)と仮定します.\(c_{ni}\)は地域\(i\)で生産されたある1つのバラエティの国\(n\)における消費量を表します.\(M_{i}\)は,内生的に決定される,各場所で生産されるバラエティの測度です.今回バラエティは連続であると仮定しますが,仮に離散の場合には,単純にバラエティの数に相当します.
 上で定式化した効用関数からは,以下のような間接効用関数が導出されます1

\[ U_{n}=\frac{B_{n}v_{n}}{P_{n}^{\alpha}Q_{n}^{1-\alpha}},0<\alpha<1 \tag{R4} \] \(B_{n}\)はアメニティ(気候や景観のような地域の自然的優位性),\(v_{n}\)は労働所得,\(P_{n}\)は交易財の価格指数,\(Q_{n}\)は床面積の価格指数を表します.また,価格指数\(P_{n}\)にはCES型を仮定します. \[ P_{n}= \left[\sum_{i \in N}^{} \int_{0}^{M_{i}}p_{ni} \left(\psi\right) ^{1-\sigma }d\psi\right]^{\frac{1}{1-\sigma}} \tag{R5} \] \(p_{ni}\left(\psi\right)\)は,場所\(i\)が生産地であるバラエティ\(\psi\)を場所\(n\)で消費する費用,言い換えればバラエティの価格です.

Production

 交易財の生産要素は労働のみで,生産には固定費用\(F>0\)と,場所\(i\)の生産性\(A_{i}\)に依存する一定の可変費用がかかるとします.この時,\(x_{i}\left(\psi\right)\)単位のバラエティ\(\psi\)を生産する際の必要総労働量(費用関数)は以下のように定式化されます. \[ l_{i}\left(\psi\right)=F+\frac{x_{i}\left(\psi\right)}{A_{i}} \tag{R6;RT6} \]  上の費用関数に基づき,企業の利潤最大化問題を解くと,バラエティの均衡価格は,賃金\(w_{i}\)に関するマークアップ価格となります.また,バラエティ間で生産技術(費用形態)は同一なので,どの\(\psi\)も価格は同一になります2

\[ p_{ni}\left(\psi\right)=p_{ni}=\left(\frac{\sigma}{\sigma-1}\right) \frac{d_{ni}w_{i}}{A_{i}} \tag{R7;RT7} \] また,企業の利潤最大化とゼロ利潤条件より,均衡生産量は以下のようになります3

\[ \overline{x}_{i}=A_{i}F\left(\sigma-1\right) \tag{R8;RT8} \]

 各場所で生産されるバラエティの測度は,労働市場清算条件から導かれます.各バラエティの均衡生産量(R8)と,その生産に必要な総労働量(R6)から,均衡労働量は以下のようになります4

\[ \overline{l}_{i}=\overline{l}=F\sigma \tag{RT9} \] これより,労働需要\(M_{i}\overline{l}_{i}\)と労働供給\(L_{i}\)が等しくなる場合のバラエティの測度\(M_{i}\)は,以下のように求められます5

\[ M_{i}=\frac{L_{i}}{F\sigma} \tag{R9} \]

Market Access and Wages

 ここまでの結果を用いて,賃金方程式を導出することができます.まず,消費地\(n\)における需要を満たすために,生産地\(i\)で生産されるバラエティの量は以下のように求められます6

\[ x_{ni}=p_{ni}^{-\sigma}d_{ni} \left(\alpha v_{n}L_{n}\right) \left(P_{n}\right)^{\sigma-1} \tag{RT3} \] 需要(RT3),利潤最大化(R7),均衡生産量(R8)を用いれば,需給一致条件から,交易財に関する賃金方程式が得られます7.この賃金方程式は,全市場での需要や貿易費用,生産技術を考慮した上で,場所\(i\)の企業が支払える最大賃金を示すものと見ることができます.

\[ \left(\frac{\sigma }{\sigma-1}\frac{w_{i}}{A_{i}}\right)^{\sigma}=\frac{1}{\overline{x}_{i}}\sum_{n \in N}^{} \left(\alpha v_{n}L_{n}\right) \left( P_{n}\right)^{\sigma-1} \left(d_{ni}\right)^{1-\sigma } \tag{RT10} \]  ここで,上の賃金方程式に基づき,企業マーケット・アクセス(firm market access; FMA)を定義します.FMAは,場所\(i\)の企業が直面する全市場における需要の加重和と見ることができます. \[ w_{i}= \xi A_{i}^{\frac{\sigma-1}{\sigma}} \left[FMA_{i}\right]^\frac{1}{\sigma},FMA_{i} \equiv \sum_{n \in N}^{}\left(\alpha v_{n}L_{n}\right) \left(P_{n}\right)^{\sigma-1} \left(d_{ni} \right)^{1-\sigma},\xi \equiv \frac{\left(F\left(\sigma-1\right)\right)^{-\frac{1}{\sigma}}\left(\sigma-1\right)}{\sigma } \tag{R36,37;RT11} \] 上の関係式から,賃金は生産性\(A_{i}\)\(FMA_{i}\)の両方に応じて上昇することがわかります.これから得られる示唆として,市場\(\left(av_{n}L_{n}\right)\left(P_{n}\right)^{\sigma−1}\)に対する財の貿易費用\(d_{ni}\)を減らす交通インフラ投資は,FMAを上昇させると共に,賃金を上昇させます.

Price Indices and Expenditure Shares

 CES型の消費\(C_{n}\)から,場所\(n\)の消費者による,場所\(i\)で生産されたあるバラエティの消費は8

\[ x_{ni}=p_{ni}^{-\sigma} \left(\alpha v_{n}L_{n}\right) \left(P_{n}\right)^{\sigma-1}. \] これより,場所\(n\)における,場所\(i\)のバラエティへの総支出は,次のように表されます. \[ M_{i} \times p_{ni} \times x_{ni}=M_{i}p_{ni}^{1-\sigma} \left(\alpha v_{n}L_{n}\right) \left(P_{n}\right)^{\sigma-1} \] 故に,場所\(i\)で生産された財への支出に場所\(n\)が占めるシェア\(\pi_{ni}\)は,重力方程式の形をとります.即ち,場所間の貿易が,二国間抵抗\(d_{ni}\),多国間抵抗(全他地域への貿易費用\(d_{nk}\)),場所\(i\)の特性(分子の\(w_{i}\)),場所\(n\)の特性(分母の各変数)に依存する形で表されます. \[ \pi_{ni}= \frac{M_{i}p_{ni}^{1-\sigma} \left(\alpha v_{n}L_{n}\right) \left(P_{n}\right)^{\sigma-1}}{\sum_{k \in N}^{}M_{k}p_{nk}^{1-\sigma} \left(\alpha v_{n}L_{n}\right) \left(P_{n}\right)^{\sigma-1}}= \frac{M_{i}p_{ni}^{1-\sigma}}{\sum_{k \in N}^{}M_{k}p_{nk}^{1-\sigma}} \tag{R11;RT16,17} \]  価格指数(R5)は,均衡価格(R7)と労働市場清算(R9)を用い,各場所の賃金\(w_{i}\)と労働力\(L_{i}\)で表されます9

\[ P_{n}=\frac{\sigma}{\sigma-1} \left(\frac{1}{\sigma F}\right)^{\frac{1}{1-\sigma}} \left[\sum_{i \in N}^{}L_{i} \left(\frac{d_{ni}w_{i}}{A_{i}}\right)^{1-\sigma}\right]^{\frac{1}{1-\sigma}} \tag{R10} \] 更に支出シェア(R11)より,\(P_{n}\)は自地域内貿易シェアで表すことができます10

\[ P_{n}=\frac{\sigma}{\sigma-1} \left(\frac{L_{n}}{\sigma F \pi_{nn}}\right)^{\frac{1}{\left(1-\sigma\right)}}\frac{w_{n}d_{nn}}{A_{n}} \tag{R12} \]

Market Clearing

 各場所での床面積への支出は,その場所に住む労働者に一括で再分配されると仮定します.コブ=ダグラス効用より,床面積への支出は所得の一定割合であることから,各場所の所得(\(v_{n}L_{n}\))は,労働所得(\(w_{n}L_{n}\))の定数倍であることが分かります. \[ v_{n}L_{n}= w_{n}L_{n}+\left(1-\alpha\right)v_{n}L_{n}= \frac{w_{n}L_{n}}{\alpha} \tag{R13;RT5} \] この関係を用いて,場所\(i\)の総所得と\(i\)で生産された財への支出が一致する,という交易財の市場清算条件を導出します.ゼロ利潤(収入=労働所得)と,効用最大の支出シェアから1つ目の等号が,(R13)を用いることで2つ目の等号が成り立ちます. \[ w_{i}L_{i}= \sum_{n \in N}^{}\alpha\pi_{ni}v_{n}L_{n}= \sum_{n \in N}^{}\pi_{ni}w_{n}L_{n} \tag{R14} \]  土地市場の清算条件についても考えます.床面積の均衡価格は,支出シェア\(1-\alpha\),総所得\(v_{n}L_{n}\)及び床面積の供給量\(H_{n}\)で決まります.床面積への支出\(\left(1-\alpha\right)v_{n}L_{n}\)と床面積からの収入\(Q_{n}H_{n}\)とが等しくなることから,床面積の価格\(Q_{n}\)は,以下のように表せます. \[ Q_{n}=\frac{\left(1-\alpha\right) v_{n}L_{n}}{H_{n}} \tag{R15;RT14} \] これに更に,(R13)の関係を代入すれば,以下の関係が得られます. \[ Q_{n}=\frac{\left(1-\alpha\right) v_{n}L_{n}}{H_{n}}=\frac{1-\alpha}{\alpha}\frac{w_{n}L_{n}}{H_{n}} \tag{R15';RT15} \]

Population Mobility

 人口移動条件(言い換えれば空間均衡)は,全地域・全労働者の実質所得(間接効用)が,ある一定の水準に等しくなることを意味します. \[ U_{n}=\frac{B_{n}v_{n}}{P_{n}^{\alpha}Q_{n}^{1-\alpha }}=\overline{U} \tag{R16;RT12} \] 価格指数(R12),各場所での支出と所得の一致(R13),土地市場清算(R15)を,間接効用(R4)に代入すると,人口移動条件(R16)は次のように書けます11

\[ \overline{U}=\frac{A_{n}^{\alpha}B_{n}H_{n}^{1-\alpha}\pi_{nn}^{-\frac{\alpha}{\left(\sigma-1\right)}}L_{n}^{-\left(\frac{\sigma\left(1-\alpha\right)-1}{\sigma-1}\right)}} {\alpha\left(\frac{\sigma}{\sigma-1}\right)^{\alpha}\left(\frac{1}{\sigma F}\right)^{\frac{\alpha}{1-\sigma}}\left(\frac{1-\alpha}{\alpha}\right)^{1-\alpha }} \tag{R17;RT22} \] (R17)を人口\(L_{n}\)について解き,全人口\(\overline{L}\)で割ると,各場所の人口シェア \(\lambda_{n}=\frac{L_{n}}{\overline{L}}\)が導出できます.\(\lambda_{n}\)は,他の全場所に比した,その場所の生産性\(A_{n}\),アメニティ\(B_{n}\),床面積の供給\(H_{n}\),場所内貿易シェア\(\pi_{nn}\)で表されることが分かります12

\[ \lambda_{n}=\frac{L_{n}}{\overline{L}}=\frac{\left[A_{n}^{\alpha}B_{n}H_{n}^{1-\alpha}\pi_{nn}^{-\frac{\alpha}{\left(\sigma-1\right)}}\right]^{\frac{\sigma-1}{\sigma\left(1- \alpha\right)-1}}} {\sum_{k \in N}^{}\left[A_{k}^{\alpha}B_{k}H_{k}^{1-\alpha}\pi_{kk}^{-\frac{\alpha}{\left(\sigma-1\right)}}\right]^{\frac{\sigma-1}{\sigma\left(1-\alpha\right)-1}}} \tag{R18} \] (R18)への直感的な解釈として,均衡人口シェア\(\lambda_{n}\)が高い地域は,生産性,アメニティ,床面積供給,市場アクセス(\(\pi_{nn}\)の小ささ)が高いことが分かります.

Labor Market Equilibrium

 人口移動条件(R16)の中の価格指数\(P_{n}\)は,消費者のバラエティへのアクセスに依存することが分かります.(R7)より,バラエティの均衡価格は場所内で同じになることを用いれば,(R5)で定義される価格指数\(P_{n}\)は以下のように表すことができます13

\[ P_{n}=\left[\sum_{i \in N}^{}M_{i} \left(d_{ni}p_{i}\right)^{1-\sigma}\right]^{\frac{1}{1-\sigma}} \] これに基づいて,消費者マーケット・アクセス(consumer market access; CMA)を以下のように定義します. \[ P_{n}=\left(CMA_{n}\right)^{\frac{1}{1-\sigma}},CMA_{n}=\sum_{i \in N}^{}M_{i} \left(p_{i}d_{ni}\right)^{1-\sigma} \tag{R38,39;RT13} \] バラエティ数\(M_{i}\)が多く,バラエティの価格\(p_{i}\)が低い場所との貿易費用\(d_{ni}\)が小さい場合に,\(CMA_{n}\)は大きくなることが分かります.これから得られる示唆として,\(d_{ni}\)を減らす交通インフラ投資は,消費者MAを上昇させると共に,価格指数を低下させます.
 移動条件(R16)に,土地市場清算(R15’),総所得(R13),企業MA(R36,37),消費者MA(R38,39)を代入し,人口\(L_{n}\)に関して解くと,均衡人口が導出できます14

\[ L_{n}=\chi A_{n}^{\left(\frac{\alpha}{1-\alpha}\frac{\sigma-1}{\sigma}\right)}B_{n}^{\frac{1}{1-\alpha}}H_{n} \left(FMA_{n}\right)^{\frac{\alpha}{\left(1-\alpha\right) \sigma}} \left(CMA_{n}\right)^{\frac{\alpha}{\left(1-\alpha\right) \left(\sigma-1\right)}}, \chi=\overline{U}^{-\frac{1}{\left(1-\alpha\right)}} \xi^{\frac{\alpha}{\left(1-\alpha\right)}}\alpha^{\frac{-\alpha}{\left(1-\alpha\right)}} \left(1-\alpha\right)^{-1} \tag{R40;RT14} \] この均衡人口\(L_{n}\)は,生産地の生産性\(A_{i}\),住宅の供給\(\overline{H}_n\)が上昇すると増えることが分かります.ここから得られる示唆として,財の貿易費用\(d_{ni}\)を減らす交通インフラ投資は,企業MAと消費者MAの両方を上昇させるので,結果的に均衡人口が増加します.
 土地価格と企業・消費者MAの関係も見ていきます.土地市場清算(R15’)をもう一度示します. \[ Q_{n}=\frac{\left(1-\alpha\right) v_{n}L_{n}}{H_{n}}=\frac{1-\alpha}{\alpha}\frac{w_{n}L_{n}}{H_{n}} \tag{R15';RT15} \] これに基づけば,消費者MAは人口\(L_{n}\)を通じて土地価格を上昇させる一方,企業MAは人口に加え賃金\(w_{n}\)も通じて土地価格を上げることが分かります.即ち,財の貿易費用\(d_{ni}\)の減少は,企業MAと消費者MAの両方を通じて土地価格を上昇させることが示唆されます.

General Equilibrium

 一般均衡は,各場所が占める労働人口シェア\(\lambda_{n}=\frac{L_{n}}{\overline{L}}\),他の場所で生産された財への各場所での支出\(\pi_{ni}\),各場所の賃金\(w_{n}\)という3つの内生変数について表されます.財市場清算(R14),貿易シェア(R11),人口移動条件(R18)を用いれば,全ての\(i,n\in N\)に関する以下の方程式体系は,\(\left\{\lambda_{n},\pi_{ni},w_{n}\right\}\)について解くことができます. \[ w_{i}\lambda_{i}=\sum_{n \in N}^{}\pi_{ni}w_{n}\lambda_{n} \tag{R19;RT25} \] \[ \pi_{ni}=\frac{\lambda_{i}\left(\frac{d_{ni}w_{i}}{A_{i}}\right)^{1-\sigma}} {\sum_{k \in N}^{}\lambda_{k}\left(\frac{d_{nk}w_{k}}{A_{k}}\right)^{1-\sigma}} \tag{R20;RT26} \] \[ \lambda_{n}= \frac{L_{n}}{\overline{L}}= \frac{\left[A_{n}^{\alpha}B_{n}H_{n}^{1-\alpha}\pi_{nn}^{-\frac{\alpha }{\left(\sigma-1\right)}}\right]^{\frac{\sigma-1}{\sigma\left(1-\alpha\right)-1}}} {\sum_{k \in N}^{}\left[A_{k}^{\alpha}B_{k}H_{k}^{1-\alpha}\pi_{kk}^{-\frac{\alpha}{\left(\sigma -1\right)}}\right]^{\frac{\sigma-1}{\sigma\left(1-\alpha\right)-1}}} \tag{R21;RT27} \] この均衡体系は,集積力と分散力(第二の自然)と,生産性,アメニティ,床面積供給,場所間貿易費用の外生的差異(第一の自然)との間の相互作用を反映するものと言えます.

Existence and Uniqueness

 QSEを解く上では,均衡の存在・一意性が問題になります.このRPubsはあくまでQSEのコンセプトを示すことが目的ですので,均衡の存在・一意性に関するテクニカルな解説は示しません(というか,筆者自身の理解が追いついていないので示ません).ただし,一意均衡の為には,\(\sigma\left(1-\alpha\right)>1\)なる条件が満たされる必要があることを注記しておきます.
 この不等式を満たすパラメータ値の下では,多様性への選好,規模に関する収穫逓増,貿易費用による集積力が,土地の非弾力的供給による混雑費(\(1-\alpha\)で捕捉)に比べ強過ぎない,という状況がおきます.この場合は結果として,各場所の実質所得は人口に応じて減少しますが,そのことが場所間での一意・安定・非特異な人口分布を保証します.
 一意均衡は,反実仮想分析におけるモデルの扱いやすさを担保する上で重要ですが,一意均衡を考えることが自明であるかという点は未だ議論の余地があります.例えば,交通インフラ投資は,複数の均衡の間で経済活動の分布をシフトさせる可能性があります.その点では,複数均衡を扱えるような,よりリッチな枠組みを用いた分析が,今後は必要となるかもしれません.

Recovering Locational Fundamentals

 冒頭で述べた通り,QSEモデルの特徴は,内生変数の観測データ\(\left\{\lambda_{n},\pi_{ni},w_{n}\right\}\)とモデル・パラメータ\(\left\{\alpha,\sigma\right\}\)の値を所与として,観測不能&外生的な場所の特性\(\left\{d_{ni},A_{i},B_{n}\right\}\)について解くこと,即ちモデルの反転が可能であるということです.解かれた\(\left\{d_{ni},A_{i},B_{n}\right\}\)は,観測データを均衡のアウトカムとして理論的に説明するものとなります.今回のモデルについては,以下の手順で解くことができます.

  • 二国間貿易費用\(d_{ni}\)を推定.
  • \(d_{ni}\)の推定結果を用いて生産性\(A_{i}\)を推定.
  • \(d_{ni},A_{i}\)の推定結果を用いアメニティ\(B_{i}\)の変数を推定.

Bilateral Trade Costs

 場所間の貿易費用が対称で(\(d_{ni}=d_{in}\)),場所内での貿易費用がかからない(\(d_{nn}=d_{ii}=1\))と仮定します.その際には例えば,Head & Ries (AER 2001) の指標を用いて,二国間貿易シェア\(\pi_{ni}\)から\(d_{ni}\)を推定することができます. \[ d_{ni}^{1-\sigma}= \left(\frac{d_{ni}d_{in}}{d_{nn}d_{ii}}\right)^{\frac{1-\sigma}{2}}= \frac{\pi_{ni}\pi_{in}}{\pi_{nn}\pi_{ii}} \tag{R26} \]

Productivity

 財市場清算条件(R14)に貿易シェア(R11)を代入すると,以下の関係が得られます. \[ w_{i}L_{i}= \sum_{n \in N}^{}\pi_{ni}w_{n}L_{n}= \sum_{n \in N}^{}\frac{L_{i}\left(\frac{d_{ni}w_{i}}{A_{i}}\right)^{1-\sigma}}{\sum_{k \in N}^{}L_{k}\left(\frac{d_{nk}w_{k}}{A_{k}}\right)^{1-\sigma}}w_{n}L_{n} \tag{R27} \] この等式の全変数は,\(A_{i}\)を除いて観測可能な変数(\(w_{n}L_{n}\))か,既に解かれている変数(\(d_{ni}\))なので,各場所の生産性\(A_{i}\)に関する一意なベクトルが定まります.

Amenity

 立地選択確率(R18)をもう一度示します.ただし,\(\mathbb{B}_{n}\)はアメニティと床面積でなる合成的な変数です. \[ \lambda_{n}= \frac{L_{n}}{\overline{L}}= \frac{\left[A_{n}^{\alpha}\mathbb{B}_{n}\pi_{nn}^{-\frac{\alpha }{\left(\sigma-1\right)}}\right]^{\frac{\sigma-1}{\sigma\left(1-\alpha\right)-1}}} {\sum_{k \in N}^{}\left[A_{k}^{\alpha}\mathbb{B}_{k}\pi_{kk}^{-\frac{\alpha}{\left(\sigma-1\right)}}\right]^{\frac{\sigma-1}{\sigma\left(1-\alpha\right)-1}}}, \mathbb{B}_{n}=B_{n}H_{n}^{1- \alpha} \tag{R28} \] ここまでに得られた二国間貿易費用\(d_{ni}^{1-\sigma}\)と生産性\(A_{i}\) に関する解を用いると,合成変数\(\mathbb{B}_{n}\)に関する一意なベクトルが定まります.

Several Remarks

 ここまでQSEモデルの反転について見てきましたが,分析に際していくつか注意が必要な点について述べておきます.まず,反転可能性が満たされるかはモデルとデータに依存します.即ち,複数均衡の場合でも観測不能変数について反転可能な場合がある一方,単一均衡でも完全には反転不能な場合があります.今回の例でも,実際に反転できたのはアメニティ\(B_{n}\)ではなく,床面積との合成変数\(\mathbb{B}_{n}\)でした.
 加えて,データが空間的に非集計になるほど,二国間貿易シェア\(\pi_{ni}\)が観測不能なケースが多くなってきます.そのような場合にも貿易費用\(d_{ni}\)を推定する代替手段としては,例えば\(d_{ni}\)を距離の指数関数としてパラメータ化することが挙げられます.
 最後に,\(\left\{\lambda_{n},\pi_{ni},w_{n}\right\}\)に係る3つの均衡条件(R19)-(R21)を,3つの未知変数\(\left\{d_{ni},A_{i},B_{n}\right\}\)について解くという手続き上,いかなる構造パラメータ\(\left\{\alpha,\sigma\right\}\)でもモデルは反転可能である点には注意が必要です.故に,構造パラメータ\(\left\{\alpha,\sigma\right\}\)の妥当性が問題となりますが,これら構造パラメータを推定するためには,更なる情報が必要となります.その情報は追加的なデータによってもたらされるかもしれないし,観測不能な場所のファンダメンタルズについての直交条件からもたらされる可能性もあります.

Counterfactuals

 (R19)-(R21)の均衡体系は,反実仮想的な変化の前後で維持される必要があります.それを可能とする方法が,Exact-hat methodology (EHM)と呼ばれるものです.反実仮想の均衡での変数\(x\)の値を\(x'\),反実仮想の値と初期均衡の値の比を\(\hat{x}=x'/x\)で表せば,(R19)-(R21)は以下のように書き換えることができます. \[ \hat{w}_{i}\hat{\lambda}_{i}w_{i} \lambda_{i}=\sum_{n \in N}^{}\hat{\pi }_{ni}\hat{w}_{n}\hat{\lambda}_{n} \pi_{ni}w_{n}\lambda_{n} \tag{R29;RT28} \] \[ \hat{\pi}_{ni}\pi_{ni}= \frac{\pi_{ni}\hat{\lambda}_{i}\left(\frac{\hat{d}_{ni}\hat{w}_{i}}{\hat{A}_{i}}\right)^{1-\sigma}} {\sum_{k \in N}^{}\pi_{nk}\hat{\lambda}_{k}\left(\frac{\hat{d}_{nk}\hat{w}_{k}}{\hat{A}_{k}}\right)^{1-\sigma }} \tag{R30;RT29} \] \[ \hat{ \lambda }_{n}\lambda _{n}= \frac{\lambda_{n}\left[\hat{A}_{n}^{\alpha}\hat{B}_{n}\hat{H}_{n}^{1-\alpha}\hat{\pi}_{nn}^{-\frac{\alpha}{\left(\sigma-1\right)}}\right]^{\frac{\sigma-1}{\sigma\left(1-\alpha\right)-1}}} {\sum_{k \in N}^{}\lambda_{k}\left[\hat{A}_{k}^{\alpha }\hat{B}_{k}\hat{H}_{k}^{1-\alpha }\hat{\pi}_{kk}^{-\frac{\alpha}{\left(\sigma-1\right)}}\right]^{\frac{\sigma-1}{\sigma\left(1-\alpha\right)-1}}} \tag{R31;RT30} \] 財の貿易費用\(\hat{d}_{ik}\)に影響する外生的な交通インフラの変化があったとします.この時均衡体系(R29)-(R31)は,賃金,人口シェア,貿易シェアの,反実仮想的な変化\(\hat{w}_{i},\hat{\lambda}_{i},\hat{\pi}_{ni}\)について解くことができます.反実仮想に必要なデータは,全地域\(i,n\in N\)についての,初期均衡の賃金,貿易シェア,人口の観測値\(\left\{w_{n},\pi_{ni},L_{n}\right\}\)のみです.
 反実仮想の意義は,人口・場所内貿易シェアの変化に着目すれば,例えばインフラ投資のようなショックによる厚生効果を測れることです.厚生効果の計測には,各場所の場所内貿易シェアと人口の変化に基づく十分統計量が用いられます.具体的には,向上前を0,向上後を1という添字で表し,ショック前後の厚生(R17)の比を取ったものです. \[ \frac{U_{n}^{1}}{U_{n}^{0}}= \left(\frac{\pi_{nn}^{0}}{\pi_{nn}^{1}}\right)^{\frac{\alpha}{\sigma-1}}\left(\frac{L_{n}^{0}}{L_{n}^{1}}\right)^{\left(\frac{\sigma\left(1-\alpha\right)-1}{\sigma-1}\right)}= \frac{\overline{U}^{1}}{\overline{U}^{0}} \tag{R32;RT23} \]  場所内貿易シェアの変化と,貿易費用を削減する輸送技術改善による厚生変化の関係を検討する為,「自給自足→交易可能」という極端なケースを考えます.貿易が行われていない場所では場所内貿易シェアは1になります.一方,貿易ができるようになると,場所内貿易比は1を下回ります.このことは,他地域との貿易から得られる利益により特化が可能となることを示唆しますが,こうした特化の進展は,実質所得の向上へと繋がります.
 同様に,人口変化と,輸送技術改善による厚生変化の関係についても考えます.仮に,場所間貿易が可能であり,かつ一部の場所(例:沿岸部)が他の場所(例:内陸部)よりも恩恵を受けているとします.その場合,労働者は実質賃金の差を裁定するために移動しますが,厚生が高い場所では人口流入による土地需要・価格上昇が生じる一方,厚生が低い場所では逆のことが起きます.こうした人口の再配分は,人口を有す全ての場所で実質賃金が平準化されるまで継続することから,厚生変化を見る際に人口を考慮することが重要なのです.

Simulation

Setting

 ここでは,仮想空間を用いたQSEモデルの実装例を示します.なお,実装のためののRコードは,Redding & Rossi-Hansberg (2017)の付録のMATLABコードを翻訳したもので,ベースラインの設定は以下の通りです.

  • 経済は30×30の緯度経度グリッド上にあり,グリッドの西半分を占める国(西)と東半分を占める国(東)の2つの国で構成されている.
  • 労働力は国内では完全に移動可能だが,国をまたいでは完全に移動不可能.
  • 労働力はグリッド内を縦・横・斜め方向に移動可能.
  • 生産性はグリッド内のセルごとでランダムに異なる.
    • セルの数だけ標準正規分布から独立にドローされる.
    • 本来であれば,データから推定する必要がある.
  • アメニティは地域間で同質.
  • 各セルの品質調整後の土地面積は,等しく100km2である.
  • パラメータの中央値は,既存の実証研究等に基づき選択.
  • 貿易費用には,地理的な摩擦の他に,2つの経済的な摩擦が含まれる.
    • セル間の摩擦:同国内の他のセルとの貿易には,100%の比例的な税(\(\tau=2\))がかかる.
    • 国間の摩擦:国家間の貿易には,100%の比例的な税(\(\tau=2\))がかかる.
    • 両方の税収は,どこかに還元されることなく放棄される.

Virtual Economy

Load Packages

 まず,今回のシミュレーションで用いるRパッケージを読み込みます.もし,インストールが済んでいないものがあれば,事前にインストールしておいてください.

library(sf)
library(dplyr)
library(matlab)
library(psych)
library(R.matlab)
library(ggplot2)
library(pals)

Distance Matrix

 今回構築する仮想空間は,30×30の緯度経度グリッド上にある900のセル(地域)で成ります.そのことを変数として明示しましょう.

##Locations on a N * N latitude and longitude grid
##Implies N * N locations
##Distance matrix is N * N
N=30
NN=N*N

 以下,これら900地域に対応するグリッドを生成します.手順としては,30×30の正方形ポリゴンを生成した後に,それを覆うように1×1の正方形ポリゴンを敷き詰めていく,ということを行います.正方形の生成にはsfパッケージのst_sfc関数を,それを覆う正方形セルの生成にはst_make_grid関数を用います.

##Compute weighted distance using these transport costs
#Generate 30×30 square
grids = sf::st_sfc(sf::st_polygon(list(rbind(c(0,0),c(N,0),c(N,N),c(0,N),c(0,0)))))
#Generate 900 1×1 cells covering square
cells <- sf::st_make_grid(grids,cellsize=1,what="polygons") %>%
  sf::st_sf()

MATLABの場合とRの場合とで,セルポリゴンを配置する順序が異なるので,MATLABの配置順に並び替えを行います.

#Arrange cell order
order <- apply(matrix(1:N,nrow=N,ncol=1),MARGIN=1,function(x){
  seq((x-1)*N+1,(x-1)*N+N)
}) %>% t
cells <- cells %>%
  dplyr::mutate(CID=matlab::reshape(order,NN,1)) %>%
  dplyr::arrange(CID)

 セルを作成し終えたところで,セルポリゴンの重心間距離を計算します.セルの重心ポイントの生成をsfパッケージのst_centroid関数で行った後,st_distance関数でポイント間の距離を計算します.返り値は900×900の距離行列です.距離行列を作成し終えたら,その対角成分(自地域内貿易費用)を1と設定します.この距離行列の0.33乗を取ることにより,セル間貿易費用の行列が生成されます.

#Calculate distance between centroids of cells
dist <- sf::st_distance(sf::st_centroid(cells))
##Own iceberg transport costs are one
diag(dist) <- 1
##Trade costs are a power function of effective distance;
dist=dist^0.33

 生成した900セル(地域)を,西側と東側に分けます.まず,西側(東側)の国にあるセルであれば1を取るような二値変数を,それぞれ作成します.

##Define east and west as two countries;
Iwest=matrix(0,nrow=N,ncol=N)
Ieast=matrix(0,nrow=N,ncol=N)
Iwest[,1:(N/2)]=1
Ieast[,(N/2+1):N]=1
Iwest=matlab::reshape(Iwest,NN,1)
Ieast=matlab::reshape(Ieast,NN,1)

次に,ベースラインでの設定での,セル間・国間の摩擦に関する変数を作成します.セル間摩擦は,対角成分が1,非対角成分が2になるような行列として表現することができます.同様に,国間摩擦は,東国のセル-西国のセルという組み合わせに対応する成分が2,同国内のセルの組み合わせに対応する成分が1になるような行列として表現できます.

##Border friction between cells
bord <- matrix(2,nrow=NN,ncol=NN)
diag(bord) <- 1
##Border friction between countries
bordcty=matrix(1,nrow=NN,ncol=NN)
bordcty[Iwest==1,Ieast==1]=2
bordcty[Ieast==1,Iwest==1]=2

 今回の実装例では,「もしも税金によるセル間摩擦が無くなったら」「もしも税金による国間摩擦が無くなったら」の2パターンの反実仮想シミュレーションを行います.摩擦が存在しない状況は,全ての成分が1になる行列として表現することができます.

##Counterfactual border friction between cells
cbord=matrix(1,nrow=NN,ncol=NN)
##Counterfactual border friction between countries
cbordcty=matrix(1,nrow=NN,ncol=NN)

Parameterization

 上で示したベースラインの設定に基づき,交易財への支出シェア\(\alpha\)と,代替弾力性\(\sigma\)を変数として明示します.

##Share of goods in consumption expenditure (1-housing share)
alpha=0.75
##Elasticity of substitution
sigma=5

Random Productivity Shocks

 生産性パラメータを生成します.正規乱数の発生はRではrnorm関数を用いることができます.ただし,今回はRedding & Rossi-Hansberg (2017)の結果をなるべく再現したいので,同論文のMATLABコードで発生させた生産性を用いたいと思います.生成された生産性は,指数変換を行った後,国ごとに幾何平均を用いて基準化します.

##I use random shocks in ARE article in terms of replicability
#a=matrix(rnorm(NN,mean=0,sd=1),nrow=NN,ncol=1)
a <- R.matlab::readMat("https://www.dropbox.com/s/9navv5lh1osk11f/a.mat?dl=1")[[1]]
a=exp(a)
a[Iwest==1]=a[Iwest==1]/geometric.mean(a[Iwest==1])
a[Ieast==1]=a[Ieast==1]/geometric.mean(a[Ieast==1])

print("Summary statistics productivities")
## [1] "Summary statistics productivities"
print("mean(a) std(a) max(a) min(a)")
## [1] "mean(a) std(a) max(a) min(a)"
c(mean(a),std(a),max(a),min(a))
## [1]  1.67109698  2.40221708 27.73737956  0.04640311

Other Parameters

 上述の通り,各セルの土地面積は100であるとします.また,労働力は世界全体で153889(アメリカの労働力人口だそうです)だけ存在し,東国・西国に均等に分布しているとします.加えて,生産の固定費用は1に設定されます.

##Land area
H=100*matrix(1,nrow=NN,ncol=1)
##Aggregate labor Supply
#US civilian labor force 2010 (Statistical Abstract, millions)
LL=153889
LLwest=(sum(Iwest)/(sum(Iwest)+sum(Ieast)))*LL
LLeast=(sum(Ieast)/(sum(Iwest)+sum(Ieast)))*LL
##Fixed production cost
FPC=1

Matrix of Fundamentals

 以下で行う分析の都合上.各セルのファンダメンタル(生産性,土地面積)を,東国・西国を表す二値変数と共に,1つの行列にまとめておきます.

fund=matrix(0,nrow=NN,ncol=4)
fund[,1]=a; fund[,2]=H; fund[,3]=Iwest; fund[,4]=Ieast

Initial Equilibrium

Open Economy Solve for Endogenous Variables in Initial Equilibrium

 このセクションで,シミュレーションの要である,均衡計算アルゴリズムの関数solveHLwCtyOpen_Eを定義します.関数の引数は,各セルのファンダメンタルfund,距離に関する貿易費用dist,セル間の摩擦bord,国間の摩擦cbord,セルの数nobsです.アルゴリズムのステップを示すと次のようになります.

  • #Initialization based on a symmetric allocation:人口\(L_{i}\)と賃金\(w_{i}\)の初期時点の値を与える.
    • 初期時点の各セルの人口は,全世界の人口をセル総数の900で割ったもので与えられるとする.
    • 初期時点の各セルの賃金は,1で与えられるとする.
  • ##trade costs:貿易費用の総計を「距離に関する貿易費用dist×セル間の摩擦bord×国間の摩擦cbord」の\(\left(1-\sigma\right)\)乗で設定.
  • 以下のステップを収束するまで繰り返す.
    • #Trade share:貿易シェア(R20)を計算する.
    • #Income equals expenditure equilibrium condition:計算された貿易シェア(R20)を用いて,(R19)の交易財市場の清算条件(所得=支出)の両辺を計算する.
    • #Population mobility equilibrium condition:計算された貿易シェア(R20)のうち,場所内貿易シェアを用いて,(R21)の人口移動条件を計算する.
    • #Update loop:交易財市場の清算条件と人口移動条件(1つ前のループで計算されたものから人口が変化しない)の両方が満たされればループを抜ける.
##Define Solver
solveHLwCtyOpen_E <- function(fund,dist,bord,bordc,nobs){
  st_tim <- Sys.time()
  #Extract location characteristics from fundamentals matrix
  #fund(:,1)=a; fund(:,2)=H; fund(:,3)=Iwest; fund(:,4)=Ieast
  a=fund[,1]; H=fund[,2]; Iwest=fund[,3]; Ieast=fund[,4]
  
  #convergence indicator
  converge=0
  
  #Initialization based on a symmetric allocation
  L_i=matrix(1,nrow=nobs,ncol=1)*(LL/nobs)
  w_i=matrix(1,nrow=nobs,ncol=1)
  
  ##trade costs
  dd=(dist*bord*bordc)^(1-sigma)
  
  x=1
  while(x<200000){
    #Trade share
    pwmat=(L_i*(a^(sigma-1))*(w_i^(1-sigma)))%*%matrix(1,nrow=1,ncol=nobs)
    nummat=dd*pwmat
    denom=matlab::sum(nummat)
    denommat=matrix(1,nrow=nobs,ncol=1)%*%denom
    tradesh=nummat/denommat
    
    #Income equals expenditure equilibrium condition
    income=w_i*L_i
    expend=tradesh%*%income
    
    #domestic trade share
    dtradesh=diag(tradesh)
    
    #Population mobility equilibrium condition
    num=((a^alpha)*(H^(1-alpha))*(dtradesh^(-alpha/(sigma-1))))^((sigma-1)/((sigma*(1-alpha))-1))
    L_e=matrix(0,nrow=nobs,ncol=1)
    L_e[Iwest==1]=num[Iwest==1]/matlab::sum(num[Iwest==1])
    L_e[Ieast==1]=num[Ieast==1]/matlab::sum(num[Ieast==1])
    L_e[Iwest==1]=L_e[Iwest==1]*LLwest
    L_e[Ieast==1]=L_e[Ieast==1]*LLeast
    
    #Convergence criterion
    income_r=round(income*(10^6))
    expend_r=round(expend*(10^6))
    L_i_r=round(L_i*(10^6))
    L_e_r=round(L_e*(10^6))
    
    #Update loop
    if((sum(income_r-expend_r)==0)&(sum(L_i_r-L_e_r)==0)){
      print("Convergence Achieved")
      x=10000000
      converge=1
      en_tim <- Sys.time()
      out <- list(w_i,L_i,tradesh,dtradesh,converge,st_tim,en_tim)
      names(out) <- c("w","L","tradesh","dtradesh","converge","Start","End")
      return(out)
    }else{
      w_e=w_i*(expend/income)^(1/(sigma-1))    
      w_i=(0.25*w_e)+(0.75*w_i)
      L_i=(0.25*L_e)+(0.75*L_i)
      #Normalization
      #Choose geometric mean wage in West as numeraire
      w_i[Iwest==1]=w_i[Iwest==1]/psych::geometric.mean(w_i[Iwest==1])
      converge=0
      x=x+1
    }
  }
}

Solve for Endogenous Variables in Initial Equilibrium

 上で定義したアルゴリズムを用いて,初期時点の一般均衡を計算します.計算が完了したら,均衡計算で得られた人口\(L_{i}\),賃金\(w_{i}\),場所内貿易シェア\(\pi_{nn}\)を用いて,その他の内生変数(価格指数,土地価格,実質賃金)を計算します.

end_var_init <- solveHLwCtyOpen_E(fund=fund,dist=dist,bord=bord,bordc=bordcty,nobs=NN)
## [1] "Convergence Achieved"
##Define other endogenous variables

#Price index
Hpindex <- function(fund,L,w,dtradesh){
  #fund(:,1)=a; fund(:,2)=H
  a=fund[,1]; H=fund[,2] 
  
  #price index
  P=(sigma/(sigma-1))*(w/a)*((L/(sigma*FPC*dtradesh))^(1./(1-sigma)))
}

#Land price
Hlandprice <- function(fund,L,w){
  #fund(:,1)=a; fund(:,2)=H; 
  a=fund[,1]; H=fund[,2]
  
  r=((1-alpha)/alpha)*((w*L)/H)
}

#Real wage
Hrealw <- function(fund,L,w,tradesh){
  #fund(:,1)=a; fund(:,2)=H; 
  a=fund[,1]; H=fund[,2] 
  
  #domestic trade share
  dtradesh=diag(tradesh)
  
  #real wage
  realwage=((L/(sigma*FPC*dtradesh))^(alpha/(sigma-1)))*(a^alpha)*((L/H)^(-(1-alpha)));
  realwage=realwage/(alpha*((sigma/(sigma-1))^alpha)*(((1-alpha)/alpha)^(1-alpha)))
}

##Calculate endogenous variables

#Price index
P <- Hpindex(fund=fund,L=end_var_init$L,w=end_var_init$w,dtradesh=end_var_init$dtradesh)

#Land prices
r <- Hlandprice(fund=fund,L=end_var_init$L,w=end_var_init$w)

#Real wage
realwage <- Hrealw(fund=fund,L=end_var_init$L,w=end_var_init$w,tradesh=end_var_init$tradesh)

Counterfactuals

Counterfactual Eliminating Border Frictions Between Countries

 ここでは,「もしも税金による国間摩擦が無くなったら」という反実仮想分析を行います.その際は,均衡計算の関数solveHLwCtyOpen_Eの引数cbordに,先ほど作成したcbordcty(国間の摩擦がない状態を表す行列)を指定した上で,反実仮想の均衡を求めます.均衡を計算できたら,初期均衡の場合と同様,その下での各内生変数を計算します.

##Solve for endogenous variables in counterfactual equilibrium

end_var_c <- solveHLwCtyOpen_E(fund=fund,dist=dist,bord=bord,bordc=cbordcty,nobs=NN)
## [1] "Convergence Achieved"
##Calculate endogenous variables

#Price index
cP <- Hpindex(fund=fund,L=end_var_c$L,w=end_var_c$w,dtradesh=end_var_c$dtradesh)

#Land prices
cr <- Hlandprice(fund=fund,L=end_var_c$L,w=end_var_c$w)

#Real wage
crealwage <- Hrealw(fund=fund,L=end_var_c$L,w=end_var_c$w,tradesh=end_var_c$tradesh)

 均衡計算の結果を用いて,厚生効果を計測します.初期均衡・反実仮想それぞれの下で得られた均衡人口・場所内貿易シェアを用いて厚生の比を取ることより,国間の摩擦がある場合とない場合の厚生を比較します.国別に厚生効果の平均を見ると,西国では厚生が0.23%,東国では厚生が0.19%上昇することが分かります(論文に載っている結果とは,何故か西と東が逆ですが).

##Define welfare gains
Hwelfaregains <- function(ctradesh,tradesh,cL,L){
  #domestic trade share
  dtradesh=diag(tradesh)
  cdtradesh=diag(ctradesh)
  #welfare gains
  welfgain=((dtradesh/cdtradesh)^(alpha/(sigma-1)))*((L/cL)^(((sigma*(1-alpha))-1)/(sigma-1)))
}

##Calculate welfare gains
welfgain <- Hwelfaregains(ctradesh=end_var_c$tradesh,tradesh=end_var_init$tradesh,cL=end_var_c$L,L=end_var_init$L)
welfgain=round(welfgain*(10^4))
welfgain=welfgain/(10^4)
#Average welfare gain in west
mean(welfgain[1:NN/2])
## [1] 1.002353
#Average welfare gain in east
mean(welfgain[(NN/2+1):NN])
## [1] 1.001917

Counterfactual Eliminating Border Frictions Between Grid Points

 続いて,「もしも税金によるセル間摩擦が無くなったら」という反実仮想分析を行います.その際は,solveHLwCtyOpen_Eの引数bordに,先ほど作成したcbord(セル間の摩擦がない状態を表す行列)を指定した上で,反実仮想の均衡を求めます.均衡を計算できたら,初期均衡の場合と同様,その下での各内生変数を計算します.再び国別に厚生効果の平均を見ると,西国では厚生が2.4%,東国では厚生が1.4%上昇することが分かります(やはり論文に載っている結果とは,何故か西と東が逆ですが).
 今回は結果として,セル間摩擦の低下は,国間摩擦の低下に比べておよそ5倍の厚生効果を及ぼすことが分かりました.その直感的な解釈としては,貿易シェアは国家間よりも国内の地域間の方がはるかに大きく重要であるということが言えます.

##Solve for endogenous variables in counterfactual equilibrium

end_var_cc <- solveHLwCtyOpen_E(fund=fund,dist=dist,bord=cbord,bordc=bordcty,nobs=NN)
## [1] "Convergence Achieved"
##Calculate endogenous variables

#Price index
ccP <- Hpindex(fund=fund,L=end_var_cc$L,w=end_var_cc$w,dtradesh=end_var_cc$dtradesh)

#Land prices
ccr <- Hlandprice(fund=fund,L=end_var_cc$L,w=end_var_cc$w)

#Real wage
ccrealwage <- Hrealw(fund=fund,L=end_var_cc$L,w=end_var_cc$w,tradesh=end_var_cc$tradesh)

##Calculate welfare gains

welfgain <- Hwelfaregains(ctradesh=end_var_cc$tradesh,tradesh=end_var_init$tradesh,cL=end_var_cc$L,L=end_var_init$L)
welfgain=round(welfgain*(10^4))
welfgain=welfgain/(10^4)
#Average welfare gain in west
mean(welfgain[1:NN/2])
## [1] 1.024397
#Average welfare gain in east
mean(welfgain[(NN/2+1):NN])
## [1] 1.014108

Visualization

Three-Dimensional Initial Equilibrium

 ここまでで得られた結果を,冒頭で作成したグリッドに結合し,傾向を可視化していきます.まず,初期均衡における各変数(対数値)の傾向をプロットすると,生産性が高い地域では,人口が集中し,賃金が高く,土地価格が高い傾向があることが読み取れます.価格指数は生産性が高い地域では低い傾向にある一方,そこから距離が離れていくと,次第に高くなる傾向が見受けられます(例えば国境付近の地域).

##Assign obtained variables to cells
cells_init <- cells %>%
  dplyr::mutate(ln_a=log(a)) %>%
  dplyr::mutate(ln_L=log(end_var_init$L)) %>%
  dplyr::mutate(ln_w=log(end_var_init$w)) %>%
  dplyr::mutate(ln_r=log(r)) %>%
  dplyr::mutate(ln_P=log(P))

##Plot log productivity
ggplot2::ggplot() +
  ggplot2::geom_sf(data=cells_init,aes(fill=ln_a),lty=0) +
  ggplot2::scale_fill_gradientn(colours=parula(25),guide="colourbar") +
  ggplot2::labs(title="Log productivity (initial)",x="Longitude",y="Latitude")

##Plot log population
ggplot2::ggplot() +
  ggplot2::geom_sf(data=cells_init,aes(fill=ln_L),lty=0) +
  scale_fill_gradientn(colours=parula(25),guide="colourbar") +
  ggplot2::labs(title="Log population (initial)",x="Longitude",y="Latitude")

##Plot log wages
ggplot2::ggplot() +
  ggplot2::geom_sf(data=cells_init,aes(fill=ln_w),lty=0) +
  scale_fill_gradientn(colours=parula(25),guide="colourbar") +
  ggplot2::labs(title="Log wages (initial)",x="Longitude",y="Latitude")

##Plot log land prices
ggplot2::ggplot() +
  ggplot2::geom_sf(data=cells_init,aes(fill=ln_r),lty=0) +
  scale_fill_gradientn(colours=parula(25),guide="colourbar") +
  ggplot2::labs(title="Log land prices (initial)",x="Longitude",y="Latitude")

##Plot log price index
ggplot2::ggplot() +
  ggplot2::geom_sf(data=cells_init,aes(fill=ln_P),lty=0) +
  scale_fill_gradientn(colours=parula(25),guide="colourbar") +
  ggplot2::labs(title="Log price index (initial)",x="Longitude",y="Latitude")

Three-Dimensional Eliminating Border Frictions Between Countries

 次に,「もしも税金による国間摩擦が無くなったら」という反実仮想分析を行った際の一連の結果を示します.プロットされているのは,各内生変数の対数相対変化です.国間の貿易費用が低下すると,経済活動は国境付近に再配分されることが分かります.最も恩恵を受けるのは,大きな市場とより安価に取引ができるようになった,国境を挟んで大都市の反対側に位置する地域です.これらの地域では,人口,賃金,地価の上昇が最も大きく,価格指数の低下が最も大きいことが分かります.一方,東国の端の方にあった2つの地域では,逆の変化が起きています.

dL=end_var_c$L/end_var_init$L; ldL=log(dL)
dw=end_var_c$w/end_var_init$w; ldw=log(dw)
dr=cr/r; ldr=log(dr)
dP=cP/P; ldP=log(dP)

##Assign obtained variables to cells
cells_init_c <- cells %>%
  dplyr::mutate(ldL=ldL) %>%
  dplyr::mutate(ldw=ldw) %>%
  dplyr::mutate(ldr=ldr) %>%
  dplyr::mutate(ldP=ldP) 

##Plot log population
ggplot2::ggplot() +
  ggplot2::geom_sf(data=cells_init_c,aes(fill=ldL),lty=0) +
  scale_fill_gradientn(colours=parula(25),guide="colourbar") +
  ggplot2::labs(title="Log relative population (b/w countries)",x="Longitude",y="Latitude")

##Plot log wages
ggplot2::ggplot() +
  ggplot2::geom_sf(data=cells_init_c,aes(fill=ldw),lty=0) +
  scale_fill_gradientn(colours=parula(25),guide="colourbar") +
  ggplot2::labs(title="Log relative wages (b/w countries)",x="Longitude",y="Latitude")

##Plot log land prices
ggplot2::ggplot() +
  ggplot2::geom_sf(data=cells_init_c,aes(fill=ldr),lty=0) +
  scale_fill_gradientn(colours=parula(25),guide="colourbar") +
  ggplot2::labs(title="Log land prices (b/w countries)",x="Longitude",y="Latitude")

##Plot log price index
ggplot2::ggplot() +
  ggplot2::geom_sf(data=cells_init_c,aes(fill=ldP),lty=0) +
  scale_fill_gradientn(colours=parula(25),guide="colourbar") +
  ggplot2::labs(title="Log relative price index (b/w countries)",x="Longitude",y="Latitude")

Three-Dimensional Eliminating Border Frictions Between Grid Points

 同様にして,「もしも税金によるセル間摩擦が無くなったら」という反実仮想分析を行った際の一連の結果を示します.今回の結果は,先ほど見た国間の貿易費用低下の場合と幾分様相が異なります.セル間摩擦低下は,2つの大都市の人口規模の相対的な縮小と,地方部への分散を引き起こしています.貿易費用が低下すると,大都市の価格指数を引き下げる自国市場効果が弱まるので,大都市周辺では価格指数があまり低下しません.賃金と地価が大都市では下落する一方,その他の地域では上昇します.

ddL=end_var_cc$L/end_var_init$L; lddL=log(ddL)
ddw=end_var_cc$w/end_var_init$w; lddw=log(ddw)
ddr=ccr/r; lddr=log(ddr)
ddP=ccP/P; lddP=log(ddP)

##Assign obtained variables to cells
cells_init_c_cc <- cells_init_c %>%
  dplyr::mutate(lddL=lddL) %>%
  dplyr::mutate(lddw=lddw) %>%
  dplyr::mutate(lddr=lddr) %>%
  dplyr::mutate(lddP=lddP) 

##Plot log population
ggplot2::ggplot() +
  ggplot2::geom_sf(data=cells_init_c_cc,aes(fill=lddL),lty=0) +
  scale_fill_gradientn(colours=parula(25),guide="colourbar") +
  ggplot2::labs(title="Log relative population (b/w grid points)",x="Longitude",y="Latitude")

##Plot log wages
ggplot2::ggplot() +
  ggplot2::geom_sf(data=cells_init_c_cc,aes(fill=lddw),lty=0) +
  scale_fill_gradientn(colours=parula(25),guide="colourbar") +
  ggplot2::labs(title="Log relative wages (b/w grid points)",x="Longitude",y="Latitude")

##Plot log land prices
ggplot2::ggplot() +
  ggplot2::geom_sf(data=cells_init_c_cc,aes(fill=lddr),lty=0) +
  scale_fill_gradientn(colours=parula(25),guide="colourbar") +
  ggplot2::labs(title="Log land prices (b/w grid points)",x="Longitude",y="Latitude")

##Plot log price index
ggplot2::ggplot() +
  ggplot2::geom_sf(data=cells_init_c_cc,aes(fill=lddP),lty=0) +
  scale_fill_gradientn(colours=parula(25),guide="colourbar") +
  ggplot2::labs(title="Log price index (b/w grid points)",x="Longitude",y="Latitude")

Appendix

Idiosyncratic Amenities

Preference

 今回紹介した基礎的なQSEモデルは,場所についての固有の選好を取り入れて拡張することが可能です.場所が持つアメニティ(例:気候,海岸への近さ)への選好は,人によって各々異なる可能性があります.こうした固有の選好は,モデルにおける追加的な分散力として作用します.
 まず,場所\(n\)に住む労働者\(\omega\)の間接効用は,固有のアメニティ・ショック\(\vartheta\)にも依存すると仮定します. \[ U_{n}\left(\vartheta\right)= \frac{b_{n}\left(\vartheta\right)B_{n}v_{n}}{P_{n}^{\alpha}Q_{n}^{1-\alpha}}, 0<\alpha<1 \tag{RB.35} \] ここで,固有ショック\(b_{n}\left(\vartheta\right)\)は,場所・労働者間で独立に,以下のフレシェ分布からドローされるとします. \[ F\left(b\right)= e^{-b^{-\epsilon}},\epsilon>1 \tag{RB.36} \] 形状パラメータ\(\epsilon\)は固有アメニティのばらつきを調整するものです.\(\epsilon\)が小さい場合は固有アメニティの異質性が大きくなり,立地決定に関わる経済変数(賃金・生活費)に対する労働者の感度が低くなります.また,間接効用は固有アメニティ\(b\)の単調関数なので,間接効用自体もフレシェ分布に従います. \[ F_{n}\left(U\right)= e^{-\psi_{n}U^{-\epsilon}}, \psi_{n} \equiv \left(\frac{B_{n}v_{n}}{P_{n}^{\alpha}Q_{n}^{1-\alpha}}\right)^{\epsilon} \tag{RB.37} \]

Population Mobility

 労働者の場所\(n\in N\)への居住選択確率を導出します.上で定式化した間接効用の分布に基づけば,労働者が場所\(n\in N\)を居住地に選ぶ確率は,以下のようになります. \[ \lambda_{n}= \frac{L_{n}}{\overline{L}}= \frac{\left(\frac{B_{n}v_{n}}{P_{n}^{\alpha}Q_{n}^{1-\alpha}}\right)^{\epsilon}}{\sum_{k \in N}^{}\left(\frac{B_{k}v_{k}}{P_{k}^{\alpha}Q_{k}^{1-\alpha}}\right)^{\epsilon}} \tag{RB.38} \] また,間接効用の期待値は,フレシェ分布の性質から,次のようにように与えられます. \[ \overline{U}= \delta\left[\sum_{k \in N}^{}\left(\frac{B_{k}v_{k}}{P_{k}^{\alpha}Q_{k}^{1-\alpha}}\right)^{\epsilon}\right]^{\frac{1}{\epsilon}} \tag{RB.39} \] ここで,\(\delta=\Gamma\left(\left(\epsilon-1\right)/\epsilon\right)\)で,\(\Gamma\left(\cdot\right)\)はガンマ関数です.期待効用の表現(RB.39)を用いると,(RB.38)の立地選択確率は以下のように書き換えられます. \[ \frac{L_{n}}{\overline{L}}= \frac{\left(\frac{B_{n}v_{n}}{P_{n}^{\alpha}Q_{n}^{1-\alpha}}\right)^{\epsilon}}{\left(\frac{\overline{U}}{\delta}\right)^{\epsilon}} \tag{RB.40} \]  ここで,本編で得られた生産,土地・労働市場生産に関する以下の関係を思い出します. \[ v_{n}= \frac{w_{n}}{\alpha} \tag{R13;RT5} \] \[ P_{n}= \frac{\sigma}{\sigma-1}\left(\frac{L_{n}}{\sigma F\pi_{nn}}\right)^{\frac{1}{\left(1-\sigma\right)}}\frac{w_{n}}{A_{n}} \tag{R12} \] \[ Q_{n}= \frac{1-\alpha}{\alpha}\frac{w_{n}L_{n}}{H_{n}} \tag{R15';RT15} \] これらの関係と期待効用(RB.39)を立地選択確率(RB.40)に代入し,\(L_{n}\)について解けば,下のような表現が得られます. \[ \frac{L_{n}}{\overline{L}}= \frac{\left[A_{n}^{\alpha}B_{n}H_{n}^{1-\alpha}\pi_{nn}^{-\frac{\alpha}{\left(\sigma-1\right)}}\right]^{\frac{1}{\left(\frac{1}{\epsilon}\right) + \left[\frac{\sigma\left(1-\alpha\right)-1}{\sigma-1}\right]}}} {\sum_{k \in N}^{}\left[A_{k}^{\alpha}B_{k}H_{k}^{1-\alpha}\pi_{kk}^{-\frac{\alpha}{\left(\sigma-1\right)}}\right]^{\frac{1}{\left(\frac{1}{\epsilon}\right) + \left[\frac{\sigma\left(1-\alpha\right)-1}{\sigma-1}\right]}}} \tag{RB.42} \] \(\epsilon\to\infty\)(固有の選好にばらつき無)であれば,固有のアメニティ・ショックがない,本編で得られた選択確率(R.18)と同じになります.


  1. 消費者の効用最大化問題は,以下のように定式化されます. \[ \max_{C_{n},H_{n}} \left(\frac{C_{n}}{\alpha}\right)^{\alpha} \left(\frac{H_{n}}{1-\alpha}\right)^{1-\alpha}B_{n} \\ s.t. v_{n}=P_{n}C_{n}+Q_{n}H_{n} \] 貿易財への支出\(P_{n}C_{n}\)と住宅財への支出\(Q_{n}H_{n}\)の合計が所得\(v_{n}\)を越えない(厳密には\(v_{n}\)に等しい)という制約の下で,効用を最大化することを意味します.この最大化問題に対応するラグランジュ関数は, \[ \mathcal{L}=\left(\frac{C_{n}}{\alpha}\right)^{\alpha}\left(\frac{H_{n}}{1-\alpha}\right)^{1-\alpha}B_{n}+\lambda\left(v_{n}-P_{n}C_{n}-Q_{n}H_{n}\right). \] \(C_{n},H_{n}\)についての一階条件を導出するとそれぞれ, \[ \frac{\partial \mathcal{L}}{\partial C_{n}}= \alpha\left(\frac{C_{n}}{\alpha}\right)^{\alpha}\left(\frac{H_{n}}{1-\alpha}\right)^{1-\alpha}B_{n}C_{n}^{-1}-\lambda P_{n}=0 \\ \frac{\partial\mathcal{L}}{\partial H_{n}}= \left(1-\alpha\right)\left(\frac{C_{n}}{\alpha }\right)^{\alpha}\left(\frac{H_{n}}{1-\alpha }\right)^{1-\alpha}B_{n}H_{n}^{-1}-\lambda Q_{n}=0 \\ \] 一階条件の比率を取ると, \[ \frac{\alpha\left(\frac{C_{n}}{\alpha}\right)^{\alpha}\left(\frac{H_{n}}{1-\alpha }\right)^{1-\alpha }B_{n}C_{n}^{-1}}{\left(1-\alpha\right)\left(\frac{C_{n}}{\alpha }\right)^{\alpha }\left(\frac{H_{n}}{1-\alpha }\right)^{1-\alpha}B_{n}H_{n}^{-1}}=\frac{P_{n}}{Q_{n}} \Rightarrow H_{n}=\frac{1-\alpha}{\alpha}\frac{P_{n}}{Q_{n}}C_{n}. \] これを予算制約に代入すると, \[ v_{n}=P_{n}C_{n}+Q_{n}\frac{1-\alpha}{\alpha}\frac{P_{n}}{Q_{n}}C_{n} \Rightarrow C_{n}=\frac{\alpha v_{n}}{P_{n}}. \] 導出された\(C_{n}\)を予算制約に代入すると, \[ v_{n}=P_{n}\frac{\alpha v_{n}}{P_{n}}+Q_{n}H_{n} \Rightarrow H_{n}=\frac{\left(1-\alpha\right)v_{n}}{Q_{n}}. \] 得られた\(C_{n},H_{n}\)を効用関数\(V_{n}\)に代入すると,間接効用関数(R4)が導出されます. \[ \begin{eqnarray*} U_{n}&=&\left(\frac{1}{\alpha}\frac{\alpha v_{n}}{P_{n}}\right)^{\alpha}\left(\frac{1}{1-\alpha}\frac{\left(1-\alpha\right)v_{n}}{Q_{n}}\right)^{1-\alpha}B_{n} \\ &=&\left(\frac{v_{n}}{P_{n}}\right)^{\alpha}\left(\frac{v_{n}}{Q_{n}}\right)^{1-\alpha}B_{n}= \frac{B_{n}v_{n}}{P_{n}^{\alpha}Q_{n}^{1-\alpha}} \end{eqnarray*} \]↩︎

  2. Spiky本(7.13)も参照のこと. 各バラエティの価格を導出する際は,最初にあるバラエティに関する需要関数を導出した上で,それを所与とした独占企業の利潤最大化行動を考えます.まず,貿易財に関する部分効用最大化の条件から需要関数を導出します.バラエティ\(\psi\)の価格を\(p_{ni}\left(\psi\right)\)とすると,部分効用最大化問題は以下のように定式化されます. \[ \max_{c_{ni}\left(\psi\right)} C_{n}= \max_{c_{ni}\left(\psi\right)} \left[\sum_{i\in N}^{}\int_{0}^{M_{i}}c_{ni}\left(\psi\right)^{\frac{\sigma-1}{\sigma}}d\psi\right]^{\frac{\sigma}{\sigma-1}} \\ s.t. \alpha v_{n}=\sum_{i\in N}^{}\int_{0}^{M_{i}}p_{ni}\left(\psi\right)c_{ni}\left(\psi\right)d\psi \] 貿易財への支出の合計が,所得のうち貿易財への支出に使われる分\(\alpha v_{n}\)を越えない(厳密には\(\alpha v_{n}\)等しい)という制約の下で,効用を最大化することを意味します.この最大化問題に対応するラグランジュ関数は, \[ \mathcal{L}=\left[\sum_{i\in N}^{}\int_{0}^{M_{i}}c_{ni}\left(\psi\right)^{\frac{\sigma-1}{\sigma}}d\psi\right]^{\frac{\sigma}{\sigma-1}}+\lambda\left(\alpha v_{n}-\sum_{i\in N}^{}\int_{0}^{M_{i}}p_{ni}\left(\psi\right)c_{ni}\left(\psi\right)d\psi\right). \] あるバラエティに関して一階条件を導出すると, \[ \frac{\partial\mathcal{L}}{\partial c_{ni}\left(\psi\right)} =\left[\sum_{i\in N}^{}\int_{0}^{M_{i}}c_{ni}\left(\psi\right)^{\frac{\sigma -1}{\sigma }}d\psi\right]^{\frac{1}{\sigma -1}}c_{ni}\left(\psi\right)^{-\frac{1}{\sigma}}-\lambda p_{ni}\left(\psi\right)=0. \] この一階条件は異なるバラエティ\(\psi'\)についても同様です.ここで,2つのバラエティ\(\psi,\psi'\)に関する一階条件の比率を取ると, \[ \left(\frac{c_{ni}\left(\psi\right)}{c_{ni}\left(\psi'\right)}\right)^{-\frac{1}{\sigma}} =\frac{p_{ni}\left(\psi\right)}{p_{ni}\left(\psi'\right)}\\ \Rightarrow c_{ni}\left(\psi\right) =\left(\frac{p_{ni}\left(\psi\right)}{p_{ni}\left(\psi'\right)}\right)^{-\sigma }c_{ni}\left(\psi'\right). \] 予算制約式にこの関係を代入すると, \[ \begin{eqnarray*} \alpha v_{n}&=&\sum_{i\in N}^{}\int_{0}^{M_{i}}p_{ni}\left(\psi\right)c_{ni}\left(\psi\right)d\psi \\ &=&\sum_{i\in N}^{}\int_{0}^{M_{i}}p_{ni}\left(\psi\right)\left(\frac{p_{ni}\left(\psi\right)}{p_{ni}\left(\psi'\right)}\right)^{-\sigma }c_{ni}\left(\psi'\right)d\psi \\ &=&\left(\frac{1}{p_{ni}\left(\psi'\right)}\right)^{-\sigma}c_{ni}\left(\psi'\right)\sum_{i\in N}^{}\int_{0}^{M_{i}}p_{ni}\left(\psi\right)^{1-\sigma}d\psi. \end{eqnarray*} \] これを\(c_{ni}\left(\psi'\right)\)について解くと,バラエティ\(\psi'\)に関する需要関数が導出されます. \[ c_{ni}\left(\psi'\right) =\frac{p_{ni}\left(\psi'\right)^{-\sigma }\alpha v_{n}}{\sum_{i\in N}^{}\int_{0}^{M_{i}}p_{ni}\left(\psi\right)^{1-\sigma }d\psi}. \] バラエティ\(\psi\)に関しても同様に,需要関数は以下のようになります. \[ c_{ni}\left(\psi\right) =\frac{p_{ni}\left(\psi\right)^{-\sigma }\alpha v_{n}}{\sum_{i\in N}^{}\int_{0}^{M_{i}}p_{ni}\left(\psi\right)^{1-\sigma }d\psi}. \] ここで,需要関数の分母に関する以下の式を,価格指数\(P_{n}\)として定義します. \[ P_{n}=\left[\sum_{i\in N}^{}\int_{0}^{M_{i}}p_{ni}\left(\psi\right)^{1-\sigma }d\psi\right]^{\frac{1}{1-\sigma}}. \] するとバラエティ\(\psi\)の需要関数は,以下のようになります. \[ c_{ni}\left(\psi\right)=p_{ni}\left(\psi\right)^{-\sigma}\alpha v_{n}P_{n}^{\sigma-1}. \] 次に,この需要関数を用いて,バラエティ\(\psi\)を生産する企業の利潤最大化問題を解きます.企業の利潤\(\pi_{ni}\left(\psi\right)\)は,以下のように定式化されます.バラエティ1つあたり必要労働量\(l_{i}\left(\psi\right)\)に輸送費用\(d_{ni}\)が掛けられている点に注意してください.これは,1単位のバラエティを生産地\(i\)から消費地\(n\)に届ける為には,\(d_{ni}\)単位だけ生産し運ぶ必要であるという前提条件によるものです. \[ \pi_{ni}\left(\psi\right)=p_{ni}\left(\psi\right)x_{ni}\left(\psi\right)-w_{i}d_{ni}l_{i}\left(\psi\right). \] 消費地\(n\)に住む代表的消費者による,生産地\(i\)のバラエティへの需要は\(c_{ni}\left(\psi\right)=p_{ni}\left(\psi\right)^{-\sigma}\alpha v_{n}P_{n}^{\sigma-1}\)でしたが,消費地\(n\)には同じ需要を持つ消費者が\(L_{n}\)だけいます.よって,生産量\(x_{ni}\left(\psi\right)=c_{ni}\left(\psi\right)L_{n}\)となります.\(\alpha v_{n}P_{n}^{\sigma-1}\)は企業にとって外生なので,まとめて\(G\)と置くと,生産量\(x_{ni}\left(\psi\right)\)は, \[ c_{ni}\left(\psi\right)L_{n}=p_{ni}\left(\psi\right)^{-\sigma}\alpha v_{n}P_{n}^{\sigma-1}L_{n}=p_{ni}\left(\psi\right)^{-\sigma}GL_{n}. \] これと,費用関数\(l_{i}\left(\psi\right)\)の具体形を\(\pi_{ni}\left(\psi\right)\)に代入すると, \[ \begin{eqnarray*} \pi_{ni}\left(\psi\right)&=&p_{ni}\left(\psi\right)x_{ni}\left(\psi\right)-w_{i}d_{ni}l_{i}\left(\psi\right) \\ &=&p_{ni}\left(\psi\right)x_{ni}\left(\psi\right)-w_{i}d_{ni}\left(F+\frac{x_{ni}\left(\psi\right)}{A_{i}}\right) \\ &=&p_{ni}\left(\psi\right)^{1-\sigma}GL_{n}-w_{i}d_{ni}\left(F+\frac{p_{ni}\left(\psi\right)^{-\sigma}GL_{n}}{A_{i}}\right). \end{eqnarray*} \] 価格\(p_{ni}\left(\psi\right)\)について,利潤\(\pi_{ni}\left(\psi\right)\)の一階条件を取ると, \[ \begin{eqnarray*} \frac{\partial \pi_{ni}\left(\psi\right)}{\partial p_{ni}\left(\psi\right)}= \left(1-\sigma\right)p_{ni}\left(\psi\right)^{-\sigma}GL_{n}+\sigma w_id_{ni}p_{ni}\left(\psi\right)^{-1-\sigma}GL_{n}=0. \end{eqnarray*} \] これを\(p_{ni}\left(\psi\right)\)について解くと, \[ p_{ni}\left(\psi\right)=\frac{\sigma}{\sigma-1}\frac{w_{i}d_{ni}}{A_{i}}. \] 導出された価格はバラエティ\(\psi\)によらないので,以後\(p_{ni}\)と記せます.↩︎

  3. Spiky本(7.14)も参照のこと.上で定式化した利潤が0となる条件を生産量について解けば導出できます. \[ \begin{eqnarray*} \pi_{ni}\left(\psi\right)&=& p_{ni}\left(\psi\right)x_{ni}\left(\psi\right)-w_{i}d_{ni}l_{i}\left(\psi\right)\\ &=&\left(\frac{\sigma}{\sigma-1}\right) \frac{d_{ni}w_{i}}{A_{i}}x_{ni}\left(\psi\right)-w_{i}d_{ni}\left(F+\frac{x_{ni}\left(\psi\right)}{A_{i}}\right)=0 \end{eqnarray*} \\ \Rightarrow x_{ni}\left(\psi\right)=A_{i}F\left(\sigma-1\right). \] 導出された生産量はバラエティ\(\psi\)及び消費地\(n\)によらないので,以後\(x_{i}\)と記せます.↩︎

  4. Spiky本(7.15)も参照のこと.(R8)を(R6)に代入することで得られます. \[ \overline{l}_{i}=F+\frac{\overline{x}_{i}}{A_{i}}=F+\frac{A_{i}F\left(\sigma-1\right)}{A_{i}}=F+F\left(\sigma-1\right)= F\sigma \]↩︎

  5. Spiky本(7.16)も参照のこと.労働市場の均衡条件を,バラエティの測度について解くと得られます. \[ M_{i}\overline{l}_{i}=M_{i}F\sigma=L_{i} \Rightarrow M_{i}=\frac{L_{i}}{F\sigma} \]↩︎

  6. Spiky本(7.21)及びp.237中段も参照のこと.
    消費地\(n\)の人口は\(L_{n}\)なので,バラエティへの総需要は\(c_{ni}L_{n}\)です.一方,バラエティの輸送には\(d_{ni}\)だけの氷塊型費用がかかるので,この需要に応える為,実際には\(c_{ni}L_{n}d_{ni}\)だけの生産が必要です.よって企業による「正味の」生産量\(x_{ni}\)は, \[ x_{ni}=c_{ni}L_{n}d_{ni}=p_{ni}^{-\sigma}\alpha v_{n}P_{n}^{\sigma-1}L_{n}d_{ni}. \]↩︎

  7. Spiky本(7.22)も参照のこと.バラエティに関する需給一致条件は,ある生産地でのバラエティの総生産量が,各消費地における消費量を足し合わせたものと等しくなることを意味します.ここまでで得られた結果を用いて表現すると, \[ \sum_{n\in N}^{}p_{i}^{-\sigma}\left(d_{ni}\right)^{1-\sigma}\left(\alpha v_{n}L_{n}\right)\left(P_{n}\right)^{\sigma-1}=\overline{x}_{i}. \] この需給一致条件を\(p_{i}\)について解き,式(R7)で置き換えると, \[ \begin{eqnarray*} p_{i}^{\sigma}=\frac{1}{\overline{x}}\sum_{n \in N}^{}\left(d_{ni}\right)^{1-\sigma}\left(\alpha v_{n}L_{n}\right)\left(P_{n}\right)^{\sigma-1} &\Rightarrow& \left(\frac{\sigma}{\sigma-1}\frac{w_{i}}{A_{i}}\right)^{\sigma}=\frac{1}{\overline{x}_{i}}\sum_{n \in N}^{}\left(d_{ni}\right)^{1-\sigma}\left(\alpha v_{n}L_{n}\right)\left(P_{n}\right)^{\sigma-1}\left(\because R7\ or\ RT7;p_{ni}=p_{i}d_{ni} \right) \\ &\Rightarrow& \left(\frac{\sigma}{\sigma-1}\frac{w_{i}}{A_{i}}\right)^{\sigma}=\frac{1}{\overline{x}_{i}}\sum_{n \in N}^{}\left(d_{ni}\right)^{1-\sigma}\left(w_{n}L_{n}\right)\left(P_{n}\right)^{\sigma-1}\left(\because R13\ or\ RT5;\alpha v_{n}L_{n}=w_{n}L_{n}\right). \end{eqnarray*} \]↩︎

  8. Spiky本(7.21)も参照のこと.(RT3)のうち,輸送の過程で溶けてなくなった分を差し引いたものです.↩︎

  9. 価格指数(R5)に,均衡価格(R7)と労働市場清算(R9)を代入すると得られます. \[ \begin{eqnarray*} P_{n}&=& \left[\sum_{i \in N}^{}\int_{0}^{M_{i}}p_{ni}\left(\psi\right)^{1-\sigma}d\psi\right]^{\frac{1}{1-\sigma}} \\ &=&\left[\sum_{i \in N}^{}\int_{0}^{M_{i}}\left(\left(\frac{\sigma}{\sigma-1}\right)\frac{d_{ni}w_{i}}{A_{i}}\right)^{1-\sigma}d\psi\right]^{\frac{1}{1-\sigma}} \\ &=&\left[\sum_{i \in N}^{}M_{i}\left(\left(\frac{\sigma}{\sigma-1}\right)\frac{d_{ni}w_{i}}{A_{i}}\right)^{1-\sigma }\right]^{\frac{1}{1-\sigma}} \\ &=&\frac{\sigma}{\sigma-1}\left[\sum_{i \in N}^{}\frac{L_{i}}{F\sigma}\left(\frac{d_{ni}w_{i}}{A_{i}}\right)^{1-\sigma}\right]^{\frac{1}{1-\sigma }} \\ &=&\frac{\sigma}{\sigma-1}\left(\frac{1}{\sigma F}\right)^{\frac{1}{1-\sigma}}\left[\sum_{i \in N}^{}L_{i}\left(\frac{d_{ni}w_{i}}{A_{i}}\right)^{1-\sigma}\right]^{\frac{1}{1-\sigma}} \\ \end{eqnarray*} \]↩︎

  10. (R11)に基づき\(\pi_{nn}\)を表すと, \[ \pi_{nn}= \frac{L_{n}\left(d_{nn}w_{n}\right)^{1-\sigma}\left(A_{n}\right)^{\sigma-1}}{\sum_{k \in N}^{}L_{k}\left(d_{nk}w_{k}\right)^{1-\sigma}\left(A_{k}\right)^{\sigma-1}} \] この\(\pi _{nn}\)に基づいて(R10)の[]内を書き表すと, \[ \left(\sum_{i \in N}^{}L_{i}\left(d_{ni}w_{i}\right)^{1-\sigma }\left(A_{i}\right)^{\sigma-1}\right)^{\frac{1}{1-\sigma }}= \left(\frac{L_{n}\left(d_{nn}w_{n}\right)^{1-\sigma}\left(A_{n}\right)^{\sigma-1}}{\pi_{nn}}\right)^{\frac{1}{1-\sigma}} \] これを,(R10)の価格指数に代入すれば,(R12)の表現が得られます.↩︎

  11. 価格指数(R12),各場所での支出と所得の一致(R13),土地市場清算(R15)を,間接効用(R4)に代入すると, \[ \begin{eqnarray*} \overline{U}&=&\frac{B_{n}\frac{w_{n}}{\alpha }}{\left(\frac{\sigma }{\sigma -1}\left(\frac{L_{n}}{F\sigma \pi_{nn}}\right)^{\frac{1}{1-\sigma }}\frac{d_{nn}w_{n}}{A_{n}}\right)^{\alpha }\left(\frac{1-\alpha }{\alpha }\frac{w_{n}L_{n}}{H_{n}}\right)^{1-\alpha }}\\ &=&\frac{B_{n}w_{n}\left(\frac{L_{n}}{\pi_{nn}}\right)^{\frac{\alpha }{\sigma -1}}\left(\frac{w_{n}}{A_{n}}\right)^{-\alpha }\left(\frac{w_{n}L_{n}}{H_{n}}\right)^{\alpha -1}}{\alpha\left(\frac{\sigma }{\sigma -1}\right)^{\alpha }\left(\frac{1}{F\sigma }\right)^{\frac{\alpha }{1-\sigma }}\left(\frac{1-\alpha }{\alpha }\right)^{1-\alpha }}\\ &=&\frac{A_{n}^{\alpha }B_{n}H_{n}^{1-\alpha }w_{n}^{1-\alpha +\alpha -1}\left(\pi_{nn}\right)^{-\frac{\alpha }{\sigma -1}}\left(L_{n}\right)^{\frac{\alpha }{\sigma -1}+\alpha -1}}{\alpha\left(\frac{\sigma }{\sigma -1}\right)^{\alpha }\left(\frac{1}{F\sigma }\right)^{\frac{\alpha }{1-\sigma }}\left(\frac{1-\alpha }{\alpha }\right)^{1-\alpha }}\\ &=&\frac{A_{n}^{\alpha }B_{n}H_{n}^{1-\alpha }\left(\pi_{nn}\right)^{-\frac{\alpha }{\sigma -1}}\left(L_{n}\right)^{-\frac{\sigma\left(1-\alpha\right)-1}{\sigma -1}}}{\alpha\left(\frac{\sigma }{\sigma -1}\right)^{\alpha }\left(\frac{1}{F\sigma }\right)^{\frac{\alpha }{1-\sigma }}\left(\frac{1-\alpha }{\alpha }\right)^{1-\alpha }} \end{eqnarray*} \]↩︎

  12. 人口移動条件を人口について解くと, \[ L_{n}=\left[\frac{A_{n}^{\alpha}B_{n}H_{n}^{1-\alpha}\left(\pi_{nn}\right)^{-\frac{\alpha}{\sigma-1}}}{\overline{U}\alpha\left(\frac{\sigma}{\sigma-1}\right)^{\alpha}\left(\frac{1}{F\sigma}\right)^{\frac{\alpha}{1-\sigma}}\left(\frac{1-\alpha }{\alpha}\right)^{1-\alpha}}\right]^{\frac{\sigma-1}{\sigma\left(1-\alpha\right)-1}}. \] 故に,人口シェアは, \[ \begin{eqnarray*} \lambda_{n}=\frac{L_{n}}{\overline{L}}&=&\frac{\left[\frac{A_{n}^{\alpha}B_{n}H_{n}^{1-\alpha}\left(\pi_{nn}\right)^{-\frac{\alpha}{\sigma-1}}}{\overline{U}\alpha\left(\frac{\sigma}{\sigma-1}\right)^{\alpha}\left(\frac{1}{F\sigma }\right)^{\frac{\alpha }{1-\sigma}}\left(\frac{1-\alpha }{\alpha }\right)^{1-\alpha}}\right]^{\frac{\sigma-1}{\sigma\left(1-\alpha\right)-1}}}{\sum_{k\in N}^{}\left[\frac{A_{k}^{\alpha}B_{k}H_{k}^{1-\alpha}\left(\pi_{kk}\right)^{-\frac{\alpha}{\sigma-1}}}{\overline{U}\alpha\left(\frac{\sigma}{\sigma-1}\right)^{\alpha}\left(\frac{1}{F\sigma}\right)^{\frac{\alpha}{1-\sigma }}\left(\frac{1-\alpha}{\alpha}\right)^{1-\alpha}}\right]^{\frac{\sigma -1}{\sigma\left(1-\alpha\right)-1}}}\\ &=&\frac{\left[A_{n}^{\alpha}B_{n}H_{n}^{1-\alpha}\left(\pi_{nn}\right)^{-\frac{\alpha}{\sigma-1}}\right]^{\frac{\sigma-1}{\sigma\left(1-\alpha\right)-1}}}{\sum_{k\in N}^{}\left[A_{k}^{\alpha}B_{k}H_{k}^{1-\alpha}\left(\pi_{kk}\right)^{-\frac{\alpha}{\sigma-1}}\right]^{\frac{\sigma-1}{\sigma\left(1-\alpha\right)-1}}} \end{eqnarray*} \]↩︎

  13. (R7)で得られたバラエティの価格を,価格指数(R5)に代入し,バラエティに関して積分を計算すると得られます. \[ \begin{eqnarray*} P_{n}&=&\left[\sum_{i \in N}^{} \int_{0}^{M_{i}}p_{ni} \left(\psi\right)^{1-\sigma }d\psi\right]^{\frac{1}{1-\sigma}} \\ &=&\left[\sum_{i \in N}^{} \int_{0}^{M_{i}}\left(p_{i}d_{ni}\right)^{1-\sigma}d\psi\right]^{\frac{1}{1-\sigma}} \\ &=&\left[\sum_{i \in N}^{}M_{i} \left(d_{ni}p_{i}\right)^{1-\sigma}\right]^{\frac{1}{1-\sigma}} \end{eqnarray*} \]↩︎

  14. 移動条件(R16)に,土地市場清算(R15’),総所得(R13),企業MA(R36,37),消費者MA(R38,39)を代入すると, \[ \begin{eqnarray*} \overline{U}&=&\frac{B_{n}v_{n}}{P_{n}^{\alpha }Q_{n}^{1-\alpha }} \\ &=&\frac{B_{n}\frac{w_{n}}{\alpha }}{\left(\left(CMA_{n}\right)^{\frac{1}{1-\sigma }}\right)^{\alpha }\left(\frac{1-\alpha }{\alpha }\frac{w_{n}L_{n}}{H_{n}}\right)^{1-\alpha }} \\ &=&\frac{B_{n}}{\alpha^{\alpha }\left(1-\alpha\right)^{1-\alpha }\left(CMA_{n}\right)^{\frac{\alpha }{1-\sigma }}\left(\xi A_{n}^{\frac{\sigma -1}{\sigma }}\left(FMA_{n}\right)^{\frac{1}{\sigma }}\right)^{-\alpha }H_{n}^{\alpha -1}\left(L_{n}\right)^{1-\alpha }}\\ \end{eqnarray*} \] これを人口について解くと, \[ \left(L_{n}\right)^{1-\alpha}=\frac{B_{n}}{\alpha^{\alpha}\left(1-\alpha\right)^{1-\alpha}\left(CMA_{n}\right)^{\frac{\alpha}{1-\sigma}}\xi^{-\alpha}A_{n}^{\frac{-\alpha\left(\sigma-1\right)}{\sigma}}\left(FMA_{n}\right)^{-\frac{\alpha}{\sigma}}H_{n}^{\alpha-1}\overline{U}} \\ \begin{eqnarray*} L_{n}&=&\left[\frac{B_{n}}{\alpha^{\alpha}\left(1-\alpha\right)^{1-\alpha}\left(CMA_{n}\right)^{\frac{\alpha}{1-\sigma}}\xi^{-\alpha}A_{n}^{\frac{-\alpha\left(\sigma-1\right)}{\sigma}}\left(FMA_{n}\right)^{-\frac{\alpha}{\sigma}}H_{n}^{\alpha-1}\overline{U}}\right]^{\frac{1}{1-\alpha}}\\ &=&\frac{B_{n}^{\frac{1}{\alpha-1}}}{\alpha^{\frac{\alpha}{1-\alpha}}\left(1-\alpha\right)^{-1}\left(CMA_{n}\right)^{\frac{\alpha}{\left(1-\sigma\right)\left(1-\alpha\right)}}\xi^{-\frac{\alpha}{1-\alpha}}A_{n}^{\frac{-\alpha\left(\sigma-1\right)}{\sigma\left(1-\alpha\right)}}\left(FMA_{n}\right)^{-\frac{\alpha}{\sigma\left(1-\alpha\right)}}H_{n}^{-1}\overline{U}^{1-\alpha}} \\ &=&\alpha^{\frac{-\alpha}{1-\alpha}}\left(1-\alpha\right)^{-1}\xi^{\frac{\alpha}{1-\alpha}}\overline{U}^{-\frac{1}{1-\alpha}}\times A_{n}^{\frac{\alpha}{1-\alpha}\frac{\sigma-1}{\sigma}}B_{n}^{\frac{1}{1-\alpha}}H_{n}\left(FMA_{n}\right)^{\frac{\alpha}{\sigma\left(1-\alpha\right)}}\left(CMA_{n}\right)^{\frac{\alpha}{\left(\sigma-1\right)\left(1-\alpha\right)}} \\ &=&\chi A_{n}^{\frac{\alpha}{1-\alpha}\frac{\sigma-1}{\sigma}}B_{n}^{\frac{1}{1-\alpha}}H_{n}\left(FMA_{n}\right)^{\frac{\alpha}{\sigma\left(1-\alpha\right)}}\left(CMA_{n}\right)^{\frac{\alpha}{\left(\sigma-1\right)\left(1-\alpha\right)}},\chi=\alpha^{\frac{-\alpha}{1-\alpha}}\left(1-\alpha\right)^{-1}\xi^{\frac{\alpha}{1-\alpha}}\overline{U}^{-\frac{1}{1-\alpha}} \end{eqnarray*} \]↩︎